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給湯室から出てきたとこで、廊下を歩いてきた裕太と目が合った。
だけどやっぱり、気まずそうに目をそらされてしまう。
…半年後には消えてあげるから、安心して。
そして私はますます卑屈になっていく。
本当は来たくなかった。
新人歓迎会なんて。
なんとかして残業を作りあげて辞退しようと思ってたのに、ご丁寧に志穂ちゃんが手伝ってくれるもんだから、定時には仕事は終わってしまった。
「会場で待ってますね」
そう言い残すと、志穂ちゃんは小走りで裕太の席へと向かう。
2人で一緒に行くんだ?
まあ…、同期だもんね。
そんな私を迎えに来てくれたのは、意外にも横尾さんだった。
「行くぞ」
って、仏頂面で背もたれをガシッと掴んで。
「お前が行きたくないのは、よくわかってる
でも俺と一緒に行けば、俺の隣の席になるだろうから、玉森とは違う席に座れるだろ」
…優しいんだが、優しくないんだか。
こういう、分かりづらい横尾さんの優しさが最近、骨身に染みる。
会場に着くと、横尾さんの予想通り、みんな来た順に座っていて、
早めに出発していた裕太達とは離れて座ることが出来た。
しかも並びの席だから、視界にも入らない。
ほんと、横尾さんは上司にしておくにはもったいないほどの人だ。
歓迎会のタイムリミットは2時間。
この2時間を乗り切ったら、私には週末が待っている。
しばらくしたら、自己紹介がてらに新人がお酌に回る時間がやってきた。
…今時、時代錯誤な習慣だよね。
まあ、女子は全員お酌しろとか言われないだけマシだけど。
裕太もビールと烏龍茶の瓶を持って、少しずつこちら側に近付いてくる。
「トイレにでも行ってこい
上手く誤魔化しとくから」
横尾さんがそんな気の利いたことを言ってくれたから、そっと会場から抜け出した。
…ああ、神様はあまりにも意地悪だ。
どうしても私を苦しめたいのかな。
私、何か悪いことでもしたっけ。
5分くらいで帰る予定にしてたんだけど。
あの場に帰る気にはなれなくて、意味もなく店の中庭に出てみた。
5月の夜風は火照った体に心地よくて、池のほとりに腰掛けたら、もうそこから動きたくなくなった。
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りたわかめ(プロフ) - くるりさん» まだ読んでいただいてたらありがたいです。地味に更新しました(/ω\) (2021年6月15日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
くるり(プロフ) - キュンキュンしたり切なくなったりしながら読ませていただいてます!これからの展開がとても楽しみです。更新大変だと思いますが無理せず頑張ってください!応援してます! (2020年8月19日 9時) (レス) id: e6324db40e (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - ゆりかさん» こちらこそ読んでくださってありがとうございます!実は本当はもっと悲しい設定にする予定だったんですが、書いてるうちにこんな感じに仕上がってしまいましたwこれからもどうぞよろしくお願いします<(_ _)> (2020年3月17日 2時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりか(プロフ) - いつもいつも楽しく読ませて頂いてます!前の記憶を覚えていないもどかしさであったり、悲しいところもあったり、キュンキュンしたり、本当に大好きなお話です!本当に面白いです!次回の更新も楽しみにしています(^^) (2020年3月9日 5時) (レス) id: 6a4601e7a5 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - みなさん» お返事遅くなりまして、申し訳ございませんでした!記憶喪失になっても、本能で好きになってしまう的な話が書きたくて(/ω\*) (2020年1月13日 21時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わかめ | 作成日時:2019年10月27日 16時