2019/06/25 ページ38
翌朝、出社したら志穂ちゃんは珍しく遅刻していた。
「連絡もないんだよね、大丈夫かな」
周りの社員は心配していたけど私は、きっと彼女は今日は来ないんじゃないかなと思ってたのに、
何故か、彼女は10時を回った頃に出社してきた。
赤い目をして遅刻してきた志穂ちゃんを見て、周りの人は声をかける。
「大丈夫?」
とか、
「何かあった?」
とか。
だけど彼女は、
「大丈夫です、ちょっと体調が悪くて…」
周りの人達にそう告げたあと、チラリとこちらに視線を向けてきたけど。
その視線は驚くほど冷たかった。
当たり前だと思う。
好きな人とうまくいくように協力してほしいとまで頼んだ人が、掻っ攫っていったわけなんだから。
私が志穂ちゃんの立場なら、睨みたくなるのも当たり前だよね。
だから私は、昼休みに志穂ちゃんをランチに誘うことにした。
…といっても、社食のランチルームなんだけど。
いつもおしゃべりな志穂ちゃんは、道中もずっと黙り込んだままで、席に着いてランチを始めても、全く口を開いてはくれなかった。
「志穂ちゃん、ごめんなさい
強力するって言ったのに、玉森くんと付き合うことになっちゃって」
志穂ちゃんはこちらに視線も向けずに、黙々とランチを食べ進めている。
「それと、本当は玉森くんが記憶をなくす前に付き合ってたんだ
ごめん、黙ってて」
その言葉で、ようやく彼女は顔を上げた。
「何で黙ってたんですか?」
聞き取れないくらいの小さな声で、彼女が聞き返してくる。
なんて説明したらいいんだろう。
「玉森くんが入院してる時、私はずっと病院に通ってたんだけど
彼は私のことを何も覚えてなくて、むしろ迷惑そうにしてた
それに、はっきり言われたしね」
「…なんて言われたんですか?」
「知らない人が毎日来るのは、気持ちが悪いって」
その言葉に彼女は、一瞬だけ目を見張った。
だよね、驚くよね。
私もあの時のことをこうして語ってるだけで、胸が苦しくなる。
「だからもう、付き合ってたって事実は隠すことにした
玉森くんも、いきなり知らない人から彼女ですとか言われても、重荷だろうし
ただの元同僚で通して、できれば距離を置きたいって思ってた」
「なのに何で付き合うんですか?
私に協力してくれるって言ったのに」
それに関しては、もうなんの申し開きもできない。
ただ私は、
「ごめんさい」
と、真摯に謝ることしかできなかった。
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りたわかめ(プロフ) - くるりさん» まだ読んでいただいてたらありがたいです。地味に更新しました(/ω\) (2021年6月15日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
くるり(プロフ) - キュンキュンしたり切なくなったりしながら読ませていただいてます!これからの展開がとても楽しみです。更新大変だと思いますが無理せず頑張ってください!応援してます! (2020年8月19日 9時) (レス) id: e6324db40e (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - ゆりかさん» こちらこそ読んでくださってありがとうございます!実は本当はもっと悲しい設定にする予定だったんですが、書いてるうちにこんな感じに仕上がってしまいましたwこれからもどうぞよろしくお願いします<(_ _)> (2020年3月17日 2時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりか(プロフ) - いつもいつも楽しく読ませて頂いてます!前の記憶を覚えていないもどかしさであったり、悲しいところもあったり、キュンキュンしたり、本当に大好きなお話です!本当に面白いです!次回の更新も楽しみにしています(^^) (2020年3月9日 5時) (レス) id: 6a4601e7a5 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - みなさん» お返事遅くなりまして、申し訳ございませんでした!記憶喪失になっても、本能で好きになってしまう的な話が書きたくて(/ω\*) (2020年1月13日 21時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わかめ | 作成日時:2019年10月27日 16時