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2019/06/24 ページ35

朝、出社してきた志穂ちゃんは、私に朝の挨拶をするとすぐに裕太の席へ行ってしまう。

これはいつもの朝の光景であり、

志穂ちゃんが裕太のことを好きだってことは、もう課内のみんなが気付いてる。

もしかしたらそれも、彼女の作戦なのかもしれない。

周りから攻める、的な。

しばらくして自席に戻って来た志穂ちゃんは、

「今晩、玉ちゃんと宮田さんと飲みに行くことになったんです」

と、うれしそうに報告してきた。

そのくせ、急にもじもじしながら、

「Aさんも呼ぼうって、提案したんですけど、
宮田さんが、今日は3人でって言うから…、本当にすいません」

とか、どこか勝ち誇った目の色をチラつかせながら、頭を下げてくるけど。

私は下手な愛想笑いで、

「よかったね」

とか、言ってみた。

きっと今夜なんだ。

今夜、志穂ちゃんに私達のことを話してしまうつもりなんだろう。








終業後、トイレで志穂ちゃんに遭遇してしまう。

彼女は念入りにメイクを直している最中で、気付かないふりで通り過ぎようとしたのに、

「Aさん!」

と、呼び止められてしまった。

…ああ、見つかっちゃった。

「これから、玉ちゃん達と飲みに行くんです」

全開の笑顔でそう言われて、

「楽しんできてね」

とか言えない私。

彼女は決して悪い子ではないと思う。

ただ、いろんな欲を我慢できない子なんだろう。

そんな子が、裕太が手に入らないと知った時に、一体どういう行動を起こしてしまうのか。

私はそれがひたすら心配でならないんだけど。








その夜は家に帰ってきても、なんだか落ち着かなかった。

今頃、どんなことになってるんだろう。

裕太のことだから、ストレートに言い過ぎて、志穂ちゃんを激昂させてるんじゃないかと心配したり。

とにかく落ち着かなかった。

なのに…、どう考えてもまだ飲み会の最中だろって時間に、裕太から電話がかかってきた。

『起きてる?』

って、甘ったるい声をして。

甘ったるいくせに、その言い方はなんだか幼く聞こえて、思わず笑ってしまった。

「起きてるよ、まだ8時なのに」

だけど。

「今から行っていい?」

いきなりそんなことを聞いてきた裕太の声は、さっきとはまるで違う強引な色が混じっていて。

全身の血が一気に逆流するような感覚を覚えた。

この話し方は、2号じゃない。

「今から行っていい?」と私に訊ねてきたのは、1号だ。

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りたわかめ(プロフ) - くるりさん» まだ読んでいただいてたらありがたいです。地味に更新しました(/ω\) (2021年6月15日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
くるり(プロフ) - キュンキュンしたり切なくなったりしながら読ませていただいてます!これからの展開がとても楽しみです。更新大変だと思いますが無理せず頑張ってください!応援してます! (2020年8月19日 9時) (レス) id: e6324db40e (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - ゆりかさん» こちらこそ読んでくださってありがとうございます!実は本当はもっと悲しい設定にする予定だったんですが、書いてるうちにこんな感じに仕上がってしまいましたwこれからもどうぞよろしくお願いします<(_ _)> (2020年3月17日 2時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりか(プロフ) - いつもいつも楽しく読ませて頂いてます!前の記憶を覚えていないもどかしさであったり、悲しいところもあったり、キュンキュンしたり、本当に大好きなお話です!本当に面白いです!次回の更新も楽しみにしています(^^) (2020年3月9日 5時) (レス) id: 6a4601e7a5 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - みなさん» お返事遅くなりまして、申し訳ございませんでした!記憶喪失になっても、本能で好きになってしまう的な話が書きたくて(/ω\*) (2020年1月13日 21時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わかめ | 作成日時:2019年10月27日 16時

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