原色ＡＢ型男子図鑑

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あの日から私は、頭がぼーっとしている。

太輔さんに握られた手のひらをじっと見つめていたり、あの感触を思い出したり。

自分でも知らなかったけど、私はなかなか異常かもしれない。

前にもディズニーランドの帰り、駐車場で手を繋いだけど、その時は特に何も思わなかったのに。

DNA検査の結果が出るまでは、とても私の精神は落ち着けそうにないな。

早く血縁だという事実を突きつけられて、楽になりたい。

それくらい、あの２人の兄達の近くにいるということは危険なことなんだ。









追試も終え、ようやく夏休みに入った私は、夕方はコンビニのバイトに行き、昼間は兄達の仕事を手伝うことになった。

しかし家庭科が大の苦手だった私は、ミシンが使えるわけでもなく、ボタン付けすら怪しい状態で…、

デザイン画の書き起こしか、ネットショップの事務仕事くらいしか手伝えないんだけど。

２人とも、

「Aがいてくれるだけで、仕事場が明るくなる」

とか言いながら、何の役にも立たない私を、褒め称えてくれる。

いつもは深夜にしてた仕事も、私の夏休み期間中だけはお昼間に変えてくれてるし。

こんなに甘やかされてていいんだろうかって思うくらい、私は兄達からの愛を一身に受けていた。

８月は２人の仕事は比較的暇らしく、勝手に休日を作っては兄達はいろんな場所に私を連れて行く。

スカイツリーやお台場、原宿で並んでパンケーキも食べたし、タピオカミルクティーも飲んだ。

そして今日は、わざわざ郊外の街まで花火大会を見に来たんだけど。

昼過ぎから２人は大騒ぎで私の浴衣を着付けて、ヘアメイクまでしてくれて。

なのに自分達は間に合わないからって、普段着のままで車で２時間のドライブ。









渋滞中でも２人は機嫌がいい。

車内にどっさり持ち込んだお菓子を食べながら、ＤＶＤを見たり、

車載の冷蔵庫を持ち込んでドリンクも補充してるから、車内はちょっとしたピクニックみたい。

「規模の小さい花火大会だから、人も少なくて穴場なんだよね
屋台もたくさん出てるし」

助手席の健永さんは得意げに、後部座席の私を振り返る。

「疲れてない？
もうすぐ着くからね」

「もうすぐってどれくらい？」

「あと３０分くらい」

道はどんどん静かな道に入って行き、それに反比例するように車内のテンションは上がっていく。

花火大会なんて生まれて初めてだ。

しかも浴衣を着てだとか。

そんなこと、ドラマかコミックの中の世界だったから。

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