原色ＡＢ型男子図鑑

18 ページ18

「…まだ、です」

ここで見栄を張る気力は、もう私には残ってなかった。

「朝食もいつも食べずに登校してるよね？
お昼はどうしてんの？いつも」

「お昼は学食で…」

とか言ってみるけど、思いっきり目が泳いでしまった。

本当は学内のコンビニで菓子パンを買って食べてんだけど。

「本当に？
じゃあ、夕食は？」

「夕食は抜いてます」

前にも言ったと思うけど。

朝と昼は食べないと無理だけど、夜は抜いてもなんとかなるから。

「この家でAちゃんが何か食べてんの、見たことないんだけど。」

あーあ、とうとうバレちゃった。

この家に来てもう１ヶ月が経ったけど、本当に今の私にはお金がなさすぎて、削るのは食費くらいしかないんだ。









「元々、少食なんで大丈夫」

元気に振舞ってみせるけど、本当は東京に出てきたことを後悔していた。

田舎に住んでた頃は、お金がなくてもごはんはお腹いっぱい食べられたし、

大学だって、周りは天才ばっかでついていくのに必死だし。

課題は多いし、お金が無いからバイトしなきゃだし、バイトしてたら、課題をする時間はないし、

だから常に寝不足で空腹だし、体調悪いしで、

今、負のループに陥ってるところなんだ。

「とりあえず今日の課題をしないと…」

独り言のようにそう呟いては、カウンターで今日の課題を広げてみる。

そんな私の様子を、健永さんは心配そうに眺めていたけど、

何故かそのままキッチンに入って、カップ麺にお湯を注ぎ始めた。

「これ、Aちゃんに差し入れ
料理できないから、カップ麺で申し訳ないけど」

ほら、こんな風に健永さんはすぐに与えようとしてくれるから。

だから、バレたくないんだって。









カップ麺ができた頃、太輔さんがリビングに戻ってきた。

カウンターでカップ麺を食べてる私を見て、

「まさかそれが夕食？」

なんて、眉をひそめる。

「あとその制服、明日返しとくから」

そうだ、制服を返さなきゃいけないんだった。

荷物はさっき、健永さんが持って帰ってくれたから大丈夫なんだけど。









「Aちゃんの食費、俺が出すわ」

急に健永さんはそんなことを言い出すから、

さっきの話の流れを知らない太輔さんも驚いちゃってるじゃん。

「本当なら、Aちゃんの学費やら生活費は親父が出すべきだと思うんだけど、
あの人気が利かないから」

19→←17

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す