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「…え？だってあの子、茉莉花さんのことをストーカーみたいに言ってなかった？」

「あの子は菜乃花って言って、茉莉花の双子の妹。
実際、茉莉花は何もしてない。
菜乃花がストーカーまがいのことをしてきて、それを全部茉莉花のせいにして、現実逃避してるだけ。」

しばらく、先生の言葉の意味がよくわからなかった。

茉莉花と菜乃花は双子で。

この間話しかけてきた方が菜乃花で、実はストーカー。

そして菜乃花はそれを、茉莉花のせいにしてるってこと？

「…複雑なんだよ、あの姉妹は。
双子だけど、全く違うから。
性格も、それに外見もあまり似てない。」

先生はソファーにぐったりと体を預けては、私を手招きする。

「隣、おいで。
全部話すから。」









「茉莉花は成績もよくて、友達からも好かれる優等生タイプ。
で、菜乃花はそんな茉莉花の存在がトラウマっていうか…、過去にいろいろ比べられてきたんだと思う。
菜乃花はそんな茉莉花をライバル視して、空回りしてる感じで。」

隣に座った私の腰に、先生は緩く腕を回しては、ぽつぽつと話し始める。

「前に話したけど、最初は告白から始まった。
菜乃花が俺に「茉莉花が好きだって言ってるから、付き合ってやってほしい」って。
それが始まり。」

「本当は菜乃花さんが、裕太のことを好きだったんだよね？」

「たぶんね。
最初に茉莉花が「玉森先生が好き」って言いだしたらしい。
多分、茉莉花より先に俺を手に入れたかったんじゃない？
でも、断ったら菜乃花の付きまといが始まって。
それを窘めたら、「茉莉花に頼まれた」とか言うわけ。
こっそり茉莉花に聞いたら、「そんなこと頼んでない」って驚いてるし。」

複雑だね。

茉莉花さんへの劣等感が、菜乃花さんをそうさせちゃったのかな。









「で、俺が茉莉花にセクハラしたって話をでっち上げて、生活指導の教師に話して。
ついでにクラスLINEで広めちゃったわけ。」

「大騒ぎになった？」

「…まあね。
でも、みんな俺を信用してくれたし、当の茉莉花がセクハラなんてされてないって証言したから。
だけど今度は、菜乃花の学校での居場所がなくなっちゃった。」

それで先生は、私の高校に異動してきたんだよね。

こうやって考えてみると、先生は生徒思いのいい教師だと思うよ。

自分の立場より生徒の立場を考えてあげて、自分を犠牲にしたんだから。

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