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抱きついた途端に、条件反射で背中に回される腕とか。

「早く寝ろ。」

とか言いながら、私の頭のてっぺんに顎を乗せてくるとことか。

それがなんか、私に甘えてるみたいで可愛かった。

「温泉、行くの？」

今日の北山さんの話をふと思い出して、ぶしつけに聞いてみる。

「温泉…？何の話？」

「大学の友達と温泉に行くんでしょ？」

「…あー、その温泉ね？
行かないけど。」

「何で？」

「てか、何でそれをAが知ってるわけ？」

「北山さんが言ってたから。」

「あー…、なんか今日、みつから不在着信入ってたわ。」

「駅で会ったんだ。
食事に誘われて断ったら、電話かけて許可取るって…」

「行ったわけ？」

徐々に先生の口調が、御機嫌斜めに変わっていくのが可愛くて、そのままもっと深く抱きついた。









「行くわけないじゃん。」

「…ならいいけど。」

って、ため息混じりに。

「みつから聞いたわけ？温泉の話。」

「そう。」

「断ったよ、この間。
受験生を抱えてるから無理って。
のん気に忘年会とかしてる気分じゃない。」

「それって、私を理由にしてるってことじゃん。」

「それもあるけど…。
今はそんな気分になれないって感じ。」

先生はそれきり、何も話さなくなった。

きっと、寝落ちしちゃったんだね。

そっと先生の腕の中から顔を上げて、その寝顔を確認してみる。

閉じた瞼の綺麗な半月と、それを縁取る長い睫毛。

カーテンの隙間から漏れ入る外の光に、ぼんやりと照らされたその寝顔をずっと眺めていたら、私は全然眠くなんかなれなかった。









寝ついたのは朝方だったのに、起こされたのはお昼前で。

たぶん５時間も寝てない。

私は先生が寝付いた後もずっと、先生の寝顔を飽きもせずに眺めてたもん。

時々、頬に指でそっと触れれば、ピクリと動く睫毛とかを楽しみながら。

ほんとは今すぐにでも寝たくて仕方なかったのに。

起きてすぐに先生は、

「飯でも食いに行くか。」

って、まだ眠そうな顔をして私をホテルの部屋から連れ出した。

車を運転しながら、まだ眠そうにあくびを噛み殺してる先生の、

その横顔に指で触れてみる。

今朝、寝付く前の時みたいに。

「…寝てる時、俺に触って遊んでなかった？」

いきなりそう言われて、慌てて指を引っ込めた。

「なんとなく覚えてる。
薄目を開けたら、Aが楽しそうに俺の顔に触ってたの。」

…最悪だ。

全部バレてたなんて。

絶対寝てると思ってたのに。

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