GATE １８ →

99 ページ49

「入試が終わったら、何したい？」

いきなりそんな質問をされて、眠いのと突然だったのとで、つい言うつもりのなかった言葉が口から飛び出す。

「一日中、裕太といたい。」

「一日中？」

「そう。
朝から晩までずっとだよ？」

「それって毎日？」

いつもなら「そんなの無理だから」って、あっさり却下されそうな話なのに、

珍しく先生も私に乗せられて、私の頭を撫でながら非現実的な話に付き合ってくれる。

「そう。
毎日だよ。」








「毎日は仕事があるから無理だわ。」

「じゃあ夏休みとかは？」

「いいけど俺、夏休みも仕事だから。
Aだって知ってんじゃん。」

「じゃあ、ＧＷ。」

「…わかった。
来年の俺のＧＷは、全部Aにあげるわ。」

「ほんとに？」

「いいよ。
ほんとはもっと、違うものあげたかったんだけど。」

「違うものって？」

「…それは秘密。」

そう言って先生はあくびをひとつ噛み殺すと、

「ほら、あと７ページ片付けろ。」

そのまま私の頭から、手を離してしまった。

先生の手のひらはまるで、魔法みたいだ。

もういないのに、まるでまだ先生の手のひらがのってるみたいに暖かい。

その温もりが冷めるのが怖くて、早く勉強を終わらせて、先生にもっと甘えたくなった。







だけど、今日のノルマが全て終わった頃には、もう朝の５時は軽く過ぎてしまっていた。

ホテルの部屋の分厚いカーテンを閉めた先生は、大きく伸びをして、

「寝るか。」

独り言のように呟いて、窓側のベッドに入ってしまう。

その行為がなんだか寂しく感じて、私も反対側のベッドに不貞腐れて潜り込んだ。

先生に背を向けて。

「…私が寝付くまで添い寝くらいしてくれてもいいじゃん。」

ベッドの中から先生にそう訴えたけど、反応はない。

どうせ、秒速で寝れちゃいそうなくらい眠いんだけどさ。

今日くらいはいいじゃん。

今日は、キスだってしてないのに。








「あんなに頑張ったのに、ご褒美もなし？」

独り言みたいに愚痴れば、深いため息とともに隣のベッドがギシッと音を立てる。

「今夜だけな？」

ベッドから降りた先生は、強引にこっちのベッドに入ってきた。

「もっと奥詰めろ。
このベッド狭いんだから。」

ぶつぶつ言われてんのに、なんだかうれしくなった私は、正面から先生に抱きついてみる。

「お前はガキか。」

とか言いながらも、その先生の口調は例えようのないくらい甘くて、それだけで私は幸せな気持ちになれるんだ。

50→←98

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す