GATE １８ →

64 ページ14

「生意気なんだよ、Aは。」

鼻で笑うようにそう言って、先生はようやく私から離れた。

「どう？
大人って怖いだろ。
これに懲りたら、もうそんなことすんなよ。」

子供扱いするみたいに頭を撫でようとするから、それが嫌でその手を払いのけた。







「あーあ、Aは手がかからなくて、物分りのいい大人な子だから楽だろうって思ってたのに。
実際は、とんでもなく手のかかるヤツだったわ」

そんなことを言いながら、また私の頭を撫でてくる。

その手をまた払いのけようとしたら、

「可愛がらせろよ、こんな時くらい。
俺にはAが可愛くて仕方ないんだから。」

なんて言う先生の目が、あまりに寂しそうだったから、そのままにしといてあげる。








「先生？」

「先生の言う可愛いってどんな意味？
生徒として？」

「可愛いに種類を付けなくちゃいけないわけ？
ただ純粋に可愛いじゃダメ？」

「だめ。
ちゃんと種類を教えて欲しい。
自分のことを好きだって言ってる生徒に、可愛いとか簡単に言って、変な期待持たせるのはどうかと思う。」

どう？正論でしょ？

最近の先生は、思いっきり教師の枠からはみ出してのびのびやっちゃってるから。

これくらい言ってもいいよね。

なのに先生は、

「いいんじゃない？
変な期待すれば。」

なんて無責任なことを言ってくる。

さっきのこと、なかったことにしてあげようと思ってたのに。

言っちゃうよ？









「生徒にキスしておいて？」

だけど先生は顔色ひとつ変えない。

「あれは、Aが仕掛けてきたからじゃん。」

「あれは…、脅かしてやろうと思っただけだし。」

「じゃあ、あのキスは事故にする？
Aがそうしたいなら、それでいいよ。」

大人はずるい。

そうやってすぐに、なかったことにしようとする。

「…そんな寂しそうな顔するなって。」

先生は私を抱き寄せようとするから、それを拒否しようとしても、

その力は意外に強くて、結局は先生の思うようにされてしまった。

先生の腕の中は、思ってたより暖かくて、思ってたより居心地はよくなかった。

だって、先生は私のものじゃないから。









「…何でこんなことするの？」

「…さあ。」

「私、生徒だよ？」

「そうだね。」

って、普通のトーンで返してくるのが、なんだか癪に障る。

先生から見た私はきっと子供で、いとも簡単に自分の腕の中に入れられる、

そんなちっぽけな存在なんだ。

65→←63

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す