GATE １８

6 ページ6

そのまま、手を止めてぼんやり先生の寝顔を眺めてた。

さっきまで寝ながら微笑んでたと思ったら、いきなりゾンビみたいに目をパチッと開けて、

「…お前、何見てんの？」

って、眉間に皺を寄せて先生は顔を上げた。

思いっきり無防備に伸びをすると、それが教師へのスイッチＯＮになったのか、

私の解いてる問題を指差して、

「ここ、間違ってる。」

って冷静に指摘してくるあたり、玉森先生って掴めない。








「あーあ、寝足りねー！」

もう一回、大きく伸びをすると、

「煙草吸いてー！」

とか言いながら、先生は窓際にもたれて外の景色を眺めはじめる。

ほんと自由だね、玉森先生って。

「先生、煙草吸うんだ？」

「吸うよ。悪い？」

「先生なのに？」

「教師が煙草吸ったり酒飲んじゃだめなわけ？」

だけど廊下からこちらに向かってくる足音が聞こえてきた途端に、先生はさっと向かいの席に戻った。

案の定、教頭が顔を覗かせて、

「２人とも頑張ってますね。」

なんて言いながら、満足げな笑みを浮かべて立ち去った後、先生はまた机に突っ伏してしまう。









「先生。」

「…何？」

先生はまだぐったりと机に突っ伏したまま、適当に返事をしてくる。

「私の前と他の人の前とじゃ、態度が違い過ぎない？」

「今更じゃない？」

って、思いっきり脱力した声。

「何で先生って、毎日眠い眠いって言ってんの？」

「いくら寝ても寝たりないから。」

「そんなに夜更かししてんの？」

「あー…、そういう質問には俺、答えないから。」

そう言ったまま、玉森先生は瞼を閉じてしまう。

また寝る気？

「夜更かししてるのか聞いてるだけじゃん。」

「それって、プライベートな質問だし。
俺は学校の外に出たら、別人格になるから。」

「別人格ってどういうの？」

私は先生を眠らせないように質問攻めにしてるのに、先生は気持ちよさそうに瞼を閉じたままそれでも律儀に回答してくる。









「それもプライベートな質問じゃん。
そういうのは答えないから。」

「じゃあ、先生は何で教師になったの？」

先生はようやく瞼を開いたかと思ったら、

「何でそんなこと聞くわけ？」

いきなり質問返しをしてくる。

「だって…。」

「だって、何？」

「先生って、教師向いてないよね？」

ストレートにそう伝えたら、玉森先生はとうとう頭をむっくりと起こしてきて、憮然とした顔で無言でこっちを見てくるから、本当に怖いんだって。

7→←5

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す