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正直、お母さんより渉が傍にいてくれる方が心強いかもしれない。
そう思ってしまう私は、相当悪い娘だ。
「Aのお母さん、向こうで仕事始めたらしいよ。
だからこっちには来れないって。
里帰り出産を望んでたけど、仕事があるから昼間はA一人になるみたい。
一人だとAも不安だろうし、俺も心配だから。」
きっと、この言葉は建前で、
「…まあ、俺は元々そうしたかったんだけど。
里帰り出産だと、子どもともしばらく離れて暮らすことになるし。
生まれたてからちゃんと面倒みたいから。」
多分、こっちが本音だな。
きっと自分の目の届く所で、子どもを一から育てたいんじゃない?
真夜中になる予定だった到着時間は、休憩の取りすぎもあって朝の4時にまでずれ込んだ。
久しぶりの家は懐かしい匂い。
そっか…、私はこれからずっとこの家に住むんだ。
ようやく安住の地にたどり着いたって感覚。
このまま寝るのかと思いきや、渉は家中の窓を開け放して大掃除を始めてしまった。
「半年以上留守にしてたから、掃除はしないと。
Aはそこに座ってて。
寝室から先に始めるから。」
私を床の間の辺に座らせるから、なんだか置物にでもなった気分だし。
寝室の掃除が終わると、布団に私を寝かせて、渉はまた掃除を始めてる。
襖の向こうから渉のかける掃除機の音や、窓の向こうから聞こえてくる小鳥の声なんかが、懐かしくて心地よくて、私はすぐに寝入ってしまった。
なのに昼過ぎには叩き起こされて、近くの産婦人科へ連行されてしまった。
「里帰り出産はしないので、こちらでお世話になります。」
やけにはっきりそう告げた渉の横顔を眺めながら、まるで自分のことじゃないように感じていた。
高校生くらいの私が、未来の自分の夢を見ているような感じ。
私の先生だった渉はいつの間にか私の夫になり、今はこうして冬に生まれてくる子どもがお腹にいて。
…これって、本当に現実なんだろうか。
だけど、これは現実の世界のようだ。
だってお腹は日に日に大きくなるし、体も重くて動くのも怠い。
なのに卒論の締切が迫ってきたせいで、私は横になることも叶わず、ずっとパソコンと大量の資料に囲まれている。
資料は渉の私物と、研究所から借りてきた文献や論文。
全然手伝ってくれない割には、毎回進捗状況をチェックしては口うるさく言ってくる。
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りたわかめ(プロフ) - 俊哉の専属メイドさん» いつもありがとう♪長い間かかっちゃいましたwまた時間のある時にでも読んでやってください!今までありがとうございました! (2019年9月12日 8時) (レス) id: ba720923d0 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - Yukieさん» ありがとうございますm(_ _)m私自身、ごめんね通知送るよー的な申し訳ない気持ちで更新してたんですけど、喜んでもらえてたと知り、本当にうれしいです。今までありがとうございました! (2019年9月12日 8時) (レス) id: ba720923d0 (このIDを非表示/違反報告)
俊哉の専属メイド(プロフ) - とうとう終わってしまったのね(;ω;)本当に更新お疲れ様でした!他の作品も読みたくなったから休みの日に読み返したいと思います!! (2019年9月12日 2時) (レス) id: 07640af2e5 (このIDを非表示/違反報告)
Yukie(プロフ) - 完結お疲れ様でした。通知が来る度に最初から読みたくなり何度も読ませていただきました。素敵な横尾さんでした。早速最初から読みたいと思います。素敵なお話をありがとうございました。 (2019年9月11日 23時) (レス) id: 69f70e9dfc (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - えみさん» 今まで読んでいただいてありがとうございました!私も学生時代に横尾先生に出会っていたら、死んでも離しません!!これからもいろいろ書いていくと思いますので、また読んでいただけたらうれしいですm(_ _)m (2019年9月11日 23時) (レス) id: ba720923d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わかめ | 作成日時:2018年7月14日 2時