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「横尾先生は、今日は何で来てくれたんですか?」
一人の生徒の質問に渉は、
「奥さんを迎えに。」
そう言って、私を指さした。
途端に、廊下中に響き渡る悲鳴とどよめき。
…ちょっと待って。
そんなに驚くこと?
「Aと横尾先生が結婚!?
いつからですか?」
「もう結婚して3年になるけど。」
真顔でそう答えるもんだから、また廊下中に悲鳴が響き渡る。
「じゃあ、その子のお母さんって、A!?」
頷いた渉を見て、またみんな騒ぎ出すから、私はますます不機嫌になる。
…って、そこ驚く!?
当たり前じゃん!
A出産→卒業証書は横尾A→横尾先生が奥さんを迎えに来る。
これで私と先生の関係が簡単に結びつかないなんて、一体どういうことよ!?
「先生も謝恩会に来てください。」
生徒達にしきりに誘われてたけど、
「Aを迎えに来ただけだから。」
そう言って渉は、私を校舎の外へ連れ出した。
「迎えに来るとか、聞いてなかったんだけど。」
そんな文句を言ってみるけど、
「謝恩会には着替えて行くとか言ってたから。
知花の機嫌もいいし、迎えに来ただけ。」
とか、涼しい顔で返されてしまう。
「みんな驚き過ぎだよ。
私と渉が結婚してるの、そんなにおかしい?」
大学の広い構内を縦断しながら、まだぶーたれてる私を見て、渉は苦笑い。
「驚くだろ。
俺だって自分でもたまに、この状況に驚くことがあるし。」
「どういう意味?」
「全ては、Aがこの大学に合格したことから始まったんだろうな、って思って。
正直、かなり厳しかったからね。」
…って、またその話?
「Aがこの大学に来なかったら、俺らはもう二度と会ってないだろうし。」
「そんなことないよ。
もしダメでも、渉に会いたくてこの学校には遊びに来てたかもよ。」
「その程度じゃ、付き合うまでは発展しなかったんじゃない?」
途端、渉の腕の中の知花がぐずり出す。
だけど私の顔を見たら、安心したように泣き止むから。
ああ、幸せってこういうことなんだなって、今更ながらに気付いた。
私はその場に立ち止まる。
知花を抱いて少し前を歩いているその見慣れた背中を、しっかり目に焼き付けたくて。
出会ってから何年、この背中を眺めてきたんだろう。
そして私は、今日で最後になるだろうその呼び方で、彼を呼んだ。
「先生。」
END
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りたわかめ(プロフ) - 俊哉の専属メイドさん» いつもありがとう♪長い間かかっちゃいましたwまた時間のある時にでも読んでやってください!今までありがとうございました! (2019年9月12日 8時) (レス) id: ba720923d0 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - Yukieさん» ありがとうございますm(_ _)m私自身、ごめんね通知送るよー的な申し訳ない気持ちで更新してたんですけど、喜んでもらえてたと知り、本当にうれしいです。今までありがとうございました! (2019年9月12日 8時) (レス) id: ba720923d0 (このIDを非表示/違反報告)
俊哉の専属メイド(プロフ) - とうとう終わってしまったのね(;ω;)本当に更新お疲れ様でした!他の作品も読みたくなったから休みの日に読み返したいと思います!! (2019年9月12日 2時) (レス) id: 07640af2e5 (このIDを非表示/違反報告)
Yukie(プロフ) - 完結お疲れ様でした。通知が来る度に最初から読みたくなり何度も読ませていただきました。素敵な横尾さんでした。早速最初から読みたいと思います。素敵なお話をありがとうございました。 (2019年9月11日 23時) (レス) id: 69f70e9dfc (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - えみさん» 今まで読んでいただいてありがとうございました!私も学生時代に横尾先生に出会っていたら、死んでも離しません!!これからもいろいろ書いていくと思いますので、また読んでいただけたらうれしいですm(_ _)m (2019年9月11日 23時) (レス) id: ba720923d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わかめ | 作成日時:2018年7月14日 2時