ショコラアレルギー chapter10

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渉はなかなか帰って来なくて、窓の外が真っ暗になった頃に、ようやく病室に戻ってきた。

もう面会時間、終わっちゃうじゃん！

ドカリと椅子に座ると、

「先生といろいろ今後のことについて話し合ってきた。」

なんて、神妙な面持ちで話し始める。

「なんて言ってた？」

「長くなりそうだから、また明日話すけど。」

そう言って渉は腕時計をチラリと見た。

面会時間は、あと少ししか残ってないもんね。

私だって、話したいことがたくさんあるのに。









「子どもが出来たこと、すぐに喜べなくてごめん。
なんかもう…、感情がぐちゃぐちゃで、うまくセーブできなかった。」

渉はそう言って、私の手をやんわりと握ってくれた。

手を握られただけで、渉の考えていることは大体わかるよ。

本当はうれしいんだってことぐらい。

だけど、不安材料が多すぎて素直に喜べないんだよね？

「あと、腹も立ってた。
Aに妊娠や入院のことを隠されてたことに。
でも、先生といろいろ話してるうちに冷静になってきて、
もし俺が逆の立場だったら、Aと同じことをしてるかもなって思ったら。
…なんか、やるせなくなった。」

「だって、渉にいてもらっても、してもらうことなんかないんだよ。
私はずっとここで寝てることしかできないし。
身の回りのお世話は全部看護師さんがしてくれるし。
それなら、秘密にしておいた方がいいんじゃないかなって思っただけ。」









「でも…、嘘をついたことは悪いと思ってる。」

「Skypeのこと？」

渉は思い出し笑いをしながら、やんわりと私の髪を撫でる。

「怪しかったよね、あれは。
毎週、あの２人が一緒にいるし。
何かあるんだろうな、とは思ってた。」

「だから早く帰って来たの？
夏休みは来月からじゃなかった？」

「そうなんだけど…。
森本とSkypeしてたら、あいつの様子がおかしくて。
問い質したら、「言えないけど、早く帰国した方がいい」って涙目で訴えてくるから。
心配になって、早めに夏休みを取らせてもらった。」

…やっぱり森本先輩だったんだ。

ほんとバカ正直で嘘がつけないっていうか。

そこが彼のいいところではあるんだけど。









「私が浮気でもしてると思った？」

そう聞けば、鼻で笑われてしまったけど。

あーあ…、何でここが病室なんだろう。

早く渉に抱きついて、甘えまくりたいのに。

カーテンの向こうには他の患者さんもいるし、言葉も選びがちになってしまうのがもどかしい。

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