ショコラアレルギー chapter８ (ページ6)

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「Aちゃんは、うちに来たら？」

お母さんの思いがけない申し出に、先生と顔を見合わせるけど。

「ここから大学に通うのは、遠すぎるから。」

そう先生が断って、この話題は終了してしまった。

帰り道、電車の中でさっきの話になる。

「２人とも、先生が研究所に行くことは反対しなかったね。」

「するわけないし。
もう、俺もいい大人なんだから。」

「でも、まさか先生の家に住んだら？とか言われるとは思わなかった。」

「お前には無理だって。
うちの親、ああ見えて完璧主義だから。
家事とかも手を抜かないし、お前が行ったら多分、プレッシャーでストレス死すると思う。」

先生はそんなことを言って笑ってるけど、一瞬、考えたんだよ。

それも悪くないのかなって。

先生は私が自分の両親と一緒にいると、安心するんじゃないかなって。

「旦那のいない家で旦那の両親と同居って、生き地獄だろ。
まあ、一年だけのことだから、１人で頑張ってみろよ。」

「わかってるよ。」

不貞腐れたように答えてはみたものの。

こうやって話が進んで行くと、現実もどんどん迫ってくるようで、

やっぱり怖くなる。

「どうだった？
誕生日デート。」

不意に先生にそう聞かれて、

「…うん、よかった。」

ぼーっとした頭のまま、答えたら、

「何それ。」

って、先生は鼻で笑う。

「なんか、よくわかんないけど、よかった。」

本当はね、頭の中で考えてるのは、先生と離れて暮らすこれからのこと。

何でも１人でできるし大丈夫、とか思ってたけど。

先生が言うように、１人になった途端、ありえないくらい寂しくなるのかなとか思ったら。

うまく笑えなかった。

多分先生は、そんな私のモヤモヤした気持ちも、きっと見透かしてるんだろうな。

「Aの両親にも言わないとな。」

「先生が研究所に行くこと？」

「そう。
近々、福岡に挨拶に行く？」

「いいよ、そんなの。
私が電話で言っとくし。」

「そういうのはちゃんとさせないと。」

先生って、そういうとこ律儀だよね。

そんなのいいのに。

「正月、帰省する？
福岡に。」

そっか、来月はもう１２月だっけ。

「今年はしようかな。」

「じゃあ、俺も一緒に帰省するわ。」

「え！？先生も？」

「普通２人で帰省するもんなんじゃないの？
結婚してんだし。」

それはそうかもしれないけど…。

先生がそんな普通の人みたいなことするなんて、どうしちゃったの？

なんか、最近の先生は変だ。