ショコラアレルギー chapter８ (ページ1)

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「何で先生は急にそんなこと思い始めたの？」

「何でって…。
今の街でAと過ごすのも、あと半年もないなって思ったら。
２人でいろんな所に行きたくなったから。」

先生が言ってる意味はわかるよ。

でもなんだか寂しい。

研究所に行くように勧めたのは私なのに。

こういう会話をしてると、ほんとに行っちゃうんだなって思い知らされる。

私はまだまだ先のことみたいにぼんやりとしか考えてなかったけど、

先生はいつも現実的で冷静で、もう先のことまでちゃんと考えてる。

「あっちに行っても、週末はAがいるんだし。
いろいろ出かけよう。」

その言い方がなんていうか…。

先生らしくないっていうか。

「先生、無理してない？」

「してない。
少し考え方を変えただけ。」

なんだか、先生は変わったよね。

そんな先生も好きだけど、なんだか寂しい。

だって、今までの先生は自分の興味のあることしかしなかったし、それ以外のことは全く見向きもしなかったのに。

それでも先生は意外に楽しそうで、私を膝の上に乗せたまま外の景色を楽しんでる。

「いいこと教えてやろうか。」

「何？」

「俺、女の子とお風呂に入ったことがなかったんだけど。
Aが初めてなんだよね。」

「ほんとに！？」

思わず声が大きくなってしまったのを、先生に笑われてしまう。

「本当。
一緒に入る意味とかわかんなかったし。
風呂は１人でのんびり入るもんなんじゃないの？」

「それに、誰かと一緒に寝るなんてことも。
今まで一度もなかったし。」

「彼女がいても？」

「彼女が俺の部屋に泊まったことなんかなかったし。」

「何で？」

「泊めたくないから。」

「私とは一緒に寝てたよね？」

「あれは、仕方なくない？
添い寝しろとか、寝かしつけろとか、いろいろ言われてたし。」

ひどくない？

でもその割には、お願いしたらあっさり添い寝してくれたよね。

「誰かと一緒に寝るなんて、考えられなかったわ。
俺、神経質だし。
Aと付き合い始めてから、俺、だいぶ変わったと思う。」

淡々とそう語る先生の声は、楽しそうにも聞こえるけど、

何か観念したような、それでいて達観したようにも聞こえた。

「なんか、後悔してるようにも聞こえるよ？」

「そう？
というより、悟りを開いたって感じ？」

なんて笑ってるけど、本当に先生は、私と結婚してから変わったよね。

何て言うの？

人間らしくなったって感じ？