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出発してから3日目。
海沿いの道から外れて、山側に入った。
「うちのおばあちゃんの家が、この辺りにあるんだよ。」
信号待ちで不意にAはそう言って、ナビをいじり始める。
「行きたいの?おばあちゃん家。」
「ここ数年行ってないから、近くまで行ってみたい。」
「いいよ、行っても。
おばあちゃんにも会いに行けば?」
「うーん…。
もうおばあちゃんは、住んでないけどね。
おじさんの家で一緒に住むようになったから、家には誰も住んでないんだ。」
Aの打ち込んだ場所は、ここから車で1時間ほど。
「勝手に行っていいわけ?」
「だってもう誰も住んでないもん。」
1時間ほど山道をぐるぐると回りながらたどり着いたのは、古い民家が10軒ほどある山と山に挟まれた小さな集落だった。
そこの一番奥の家がAのおばあちゃんの家らしい。
かなり古い平屋の家で、蔵があったり、離れっぽい建物があったり、なかなか風情のある感じ。
「すごいでしょ?
多分、築100年近くは経ってると思う。」
なんて得意げに言いながら、Aは裏口の鉢植えの中に隠してあった鍵を取り出しては、慣れた感じで裏口から入ってしまう。
閉め切った雨戸を開放すれば、真っ暗だった家の中が一気に明るくなった。
「この家、近所の親戚がたまに使ってるから、電気も水もガスも全部使えるんだよ。
今夜はここに泊まらない?」
Aは笑顔でそんなことを聞いてくるけど正直、返事に困る。
俺も一瞬、こういう所に泊まるのも悪くないな、とは思ったけど。
でも本当に泊まっちゃうわけ?
すっかり泊まる気満々のAは、押し入れから布団を引っ張り出してきては、
「干しちゃおう。
たいちゃん、手伝って。」
って、1人で忙しそう。
家の中を軽く掃除して、ふと気付く。
「A、夕食とかどうするわけ?」
「買いに行く?
車で少し行った先にスーパーがあったはず。」
Aの言う通りに車を走らせれば、スーパーと呼んでいいのかわからないくらいの小さな店があった。
そこで食材を買い込んで、2人で台所に立つ。
今日のメニューはカレーライス。
並んでキッチンに立ったら、古い家だから動く度に床が軋んで音を立てるのが面白くて、2人でずっと笑ってた。
なんだか楽しい春休み。
まさか、この家に何日も滞在することになるとは、この時は思ってもみなかったけど。
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りたわかめ(プロフ) - ひツじさん» こんにちは。実はリンクが外れてまして、この話は続きがあって、もう完結しています。リンクを貼り直しておきましたので、また読んでやってください♪ (2021年3月1日 17時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
ひツじ(プロフ) - 更新待ってます。 (2021年2月28日 23時) (レス) id: 5c2b66150e (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - 玲さん» 長いこと返信できずに申し訳ないです。しばらく更新できなかったので、ようやくお返事できます♪続きの展開、お気に召していただけたらとてもうれしいです(*'ω'*) (2018年3月3日 23時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
玲(プロフ) - 待ってましたー!!!ものすっごく嬉しいです!フランボワーズの藤ヶ谷さんが大好きなのでもう本当嬉しいです。しかもこの続きの展開に期待が(//▽//) (2018年1月2日 10時) (レス) id: b7c4bcac2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わかめ | 作成日時:2016年12月21日 23時