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観覧車がてっぺんに近づくにつれ、二階堂くんの態度はそわそわと落ち着かなくなる。

向かい合わせに座ってたのに、ふと気づいたかのようにいきなり隣に座り直してくる。

「ゴンドラが傾くじゃん。」

そう苦情を言っても、たぶん今の二階堂くんには聞こえてない。

きっと、あれだよ。

ゴンドラのてっぺんでキスすることばかりを考えてるんだよ。

でもね、そんな一生懸命な二階堂くんが、さっきから愛しくてたまんないんだ。









ゴンドラがてっぺんに到着する寸前、膝に所在なげに置かれていた二階堂くんの手がぎゅっと結ばれて、

「…A。」

切なそうな声で、そう私の名前を呼んだ。

私が顔を向けた途端に、降ってくる二階堂くんの唇。

最初は遠慮がちにそっと触れて、まるで味わうように角度を変えて何度も唇を重ねると、

そのまま止まらなくなった。

それは私にも二階堂くんにも、意外な出来事だったかもしれない。

2人にとってのファーストキスだから、思い出に残るようなものにしたかったはずなのに。

予想以上のキスの感触と気持ちよさに、一気に現実世界が遠のいて行ってしまった。

そのキスはゴンドラが地上に近づく手前まで続いて、

私の両腕は二階堂くんの首に回っていたし、二階堂くんの腕は私の頬と背中に回されている。

それも、知らないうちに自然に。

もっとお互いを自分の近くに引き寄せたくて、気が付いたらこんなに時間が経っていた。









観覧車から降りた私達は、何故か無言で。

私はさっきまでのキスの感覚に頭がぼうっとしていたし、二階堂くんは早足で私の手を引いて歩いていた。

帰りの電車の中でも、私達には会話はない。

混雑してる電車の中、固く手を繋いでいるだけ。

最寄り駅に到着した頃には、もうすっかり辺りは暗くなっていた。

口を開くのが怠い。

さっきから体も重くて、二階堂くんが手を引いてくれてなかったら歩けないくらいだ。

だから部屋のドアを開けてすぐに、私は体の重心を任せるように二階堂くんにもたれかかった。

二階堂くんはやっぱり何も言わないまま、玄関先で観覧車の続きのようなキスを始めた。

…だから、もうだめだって。

二階堂くんとのキスは麻薬みたいなものだ。

一度味わうと、もう一度味わいたくて、キスしてない間はずっとそのことを考えてしまうような。

もうこの部屋には、可愛い二階堂くんはいなくて、ただ私に考えることをやめさせるようなキスを与える二階堂くんしかいなかった。

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わかめ(プロフ) - にかはるかさん» そろそろ話もいい感じに入ってきました(/ω\)今日も更新しましたので、是非、読んでいただければ幸いです(*'ω'*) (2018年4月18日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
にかはるか(プロフ) - 主人公ちゃん頑張ったー!にかちゃんどうするんだろ?ラブラブになれるかなー?!ドキドキがとまりません!! (2018年4月17日 4時) (レス) id: 3dfef49e61 (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - チョコブラックさん» コメントありがとうございますm(_ _)mどちらも読んでいただけて幸せですー(*´∀`)♪ (2018年4月9日 23時) (レス) id: ba720923d0 (このIDを非表示/違反報告)
チョコブラック(プロフ) - タマちゃんの方も読んだけどどっちも面白いし、読みやすい! (2018年4月8日 10時) (レス) id: e5c704bd79 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わかめ | 作成日時:2018年3月21日 4時

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