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妙な緊張感の中、なんとか講義が終わる。
樹と一緒のときは大体一番後ろの席に座るから、嫌でも北斗たちの姿が視界に入るわけで。
「やべー、全然頭入ってこなかったわ。」
『…私も。』
「珍しくない？」
樹はほぼ寝てたからなんだけどね。
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できるだけ早く教室を出たくて荷物をまとめていると、隣の方に何人かぞろぞろと近づいてくる。
「樹くん、今日暇？」
いかにも大学生、って感じの可愛らしい女の子たち。
「あーごめん！今日はちょっと用事ある。」
手を合わせて申し訳なさそうに言う樹に、女の子たちが悲しそうな顔をした。
「そっかー、じゃあまた遊ぼうね！」
「うん、また連絡して。」
キラキラした笑顔で手を振る樹は、私といるときと雰囲気がちょっと違う。
『モテるんだね、樹。』
「今更？」
集団が離れたのを見て手を振るのをやめると、
いつもの樹に戻った気がした。
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どうして私と一緒にいてくれるんだろう。
樹も、
...大我さんも。
樹が女の子とよく遊んでいることは知っていたけど、北斗の話を聞いて思った。
大我さんもきっと同じで、
彼に好意を寄せる人なんていくらでもいるんだって。
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「あ、きょも。」
その声を聞いて樹の目線を追うと、
入口に立ってこっちに手を振る大我さんの姿があった。
目が合って私も振り返そうと手を上げたとき。
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「あれ京本先輩？」
「うわ、ほんとだ。初めて実物見た。」
「やっぱかっこいい...」
「誰に手振ってんだろ。」
「樹くんじゃない？2人仲良いし。」
思いがけず聞こえてきたそんな声。
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自分だけが小さくなったような、他の世界にいるような、なんとも言えない感覚に足がすくんだ。
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作者名：渓徳 | 作成日時：2022年11月8日 0時
