久遠監督とあいつ 神童side ページ16
貴「：：：ごめん」
肩から聞こえる丘橋の掠れた声の謝罪に俺は、振り払う事も、突き飛ばす事も出来ずにただ佇んでいた。
他の部員は丘橋の行動にただ驚いているばかりでいた。するとそこに、
久「何を、やっているんだ？」
久遠監督と音無先生が現れた。俺と丘橋の姿を見て不思議な顔を浮かべる二人、俺は慌てて弁解をしようとしたが、
貴「すいません、少し貧血だったもので：：：神童君に肩を貸してもらっていたんです」
神「な！」
貴「だろ？神童君」
知らない内に顔をあげていた丘橋。すらすらと嘘の理由を述べ、丘橋は鋭い目つきで俺に肯定を促した。
俺はその圧力に押されて頷いた。
音「それじゃあ、一回保健室に行く？」
貴「いいえ、それ程ではないのでご安心を」
音無先生の心配も丘橋は悪気もなくスルーをしていく。けれど、音無先生は落ち込むことはなかった。
最善の断り方だったらしい。
久「おい、丘橋」
貴「：：：え？私ですか？」
久「ああ、お前だ」
後ろに下がろうとしていた丘橋を何故か久遠監督は呼び止める。丘橋自身も、自分が呼び止められるとは思ってもみなかったらしく驚いている。
そして、久遠監督は丘橋の元へと歩み寄る。
久「お前は、神山夏菜子の事を知っているか？」
貴「！？」
久遠監督の言った言葉に驚く丘橋。けれど、俺達はその『神山夏菜子』という人間の存在を知らない。
久遠監督が知っているのならサッカー関係者なのか？
貴「：：：すいませんけど、私は知りませんよ。そんな人」
久「：：：」
貴「：：：」
久「そうか、それは悪かったな」
少しだけど、丘橋は迷った様子で久遠監督に返事を返した。まるで、今はまだ聞いてはいけないと思っている様子で：：：。
久遠監督はそんな丘橋の様子を見てあきらめたかのように一息吐いた。
貴「す、すいません」
久「いや、私も悪かったな」
謝る丘橋の頭を撫でながら微笑む久遠監督。
霧「あの二人、知り合いなのか？」
神「さあ、分からない」
この二人の関係に俺と霧野、他の部員達は不思議がるばかりだった。
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作者名：keito | 作成日時：2015年5月18日 0時
