だって、わたしがいる【銀魂】9

ご褒美 : 土方 ページ20

土「で、なんで月は離れていってんだ？」



想う女を背負い、
その温もりを纏いながら
月を見上げているなんて
随分と甘えことをする、ドラキュラと猫だな。



「あ、それはですね、」



楽しそうに声を弾ませるAに
思わず、口元が緩む。
屈託のない、か。確かに。
いろんなモンを背負ってる筈なのに、
こいつのこの潔癖さはどこから来るのか。



「地球と月が織りなす、自転、公転のせいなんです。
角運動量は分かりますよね？それによっ、」


土「やめろやめろやめろ。そうじゃない。
俺がしたかった話はそっちじゃない」



純粋とアホは紙一重か。
ロマンチックだった空気が
一気に理系の空気になっちまった。



土「はあ…理系が強ぇのは分かった。
じゃあ、お前『月が綺麗ですね』には
他意があること知ってるか？」


「他意？」


土「ああ。これは文系の話ってとこだな」


「…？分かりません。
どんな意味があるんですか？」


土「……、」


「え、何ですか？言っておいて
教えてくれないんですか！？
あ…ほんとは土方さんも知らないとか？」


土「知ってるわ！お前と一緒にすんな！」


「じゃあ、教えてくださいよっ！！」


土「…いや、だからだな」


「？言いにくいような…あ、下ネ、」


土「違ぇから！
もし、下ネタだったら言わねぇから！！」


「じゃあ、何ですか？」



どっちにしろ。
墓穴を掘ったことに間違いはなさそうだ。
仮装なんかして、俺もおかしくなったか？
観念して、口にするなんて。




土「『あなたを愛してる』」




「…へ、」





土「………」


「‥‥ひじ、かたさん、今なん、」


土「聞こえなかったか？もう言わねぇ。
てめぇで調べろ」


「……は、はい…」




それからはふたりとも言葉は発さず、
緩めて歩いていたとは言え、
そう遠くない屯所へと着いてしまった。
玄関先でAを下ろし、
俺は近藤さんたちを待つから
先に休め、つうか、他の奴らに見られる前に
さっさと着替えろと言うと



きゅっ、と


背を向けた
俺の袖が引っ張られて



「…っドラキュラさん」


土「…どうした？」


「………、、」



俺を見上げる顔に
少しばかり、焦りを踊らせていた。



「…月が綺麗ですね」


土「………っ！？」



俺が驚く間もなく、
小さな手は俺の顔を寄せ



声が出ぬ、唇は塞がれた。



「…ご褒美、もらいました」



悪戯に笑い、恥ずかしそうに
その身を離そうとするAを
気づけば、抱き寄せていた。

やっぱり、分からないけれど（修正有→←からっぽ : 土方

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