だって、わたしがいる【銀魂】4

錯視 : 土方 ページ48

月が、やけに赤くでけぇ。








でけぇ、なんてものは
そもそも錯視で
低い月は、ビルや木や
周りに比較するものがある故に
そう見えるのだという。



赤いのもまた低い故だそうだ。









なんてことを、
あいつは知っているのだろうか。





はたはた、と裸足で縁側を歩き
赤い月の光を見上げられる、そこに座る。




風呂上がりの髪からは
ぽたぽたと雫が落ち、
はだけた俺の膝元に落ちる。









いつものように、
ここに、あいつがいたならば








『風邪ひきますよ』



だとか、



『もうちょっと、足はだけさせましょうか！
色香が！！やばいですよ！！！』



だとか、
また意味も分からねぇことで
興奮していたことだろうな。









？「なぁに、1人で
ニヤついてんですかぃ。気色悪い」


土「…まだ起きてたのか、総悟」





緩んでいたらしい口元を慌てて、閉める。
ふらりと現れたのはAではなく、
昼夜変わらず、気怠そうな総悟だった。
総悟はそのまま、柱に凭れながら座った。





土「…なんだ、話でもあんのか？」


沖「いねぇですねぇ、
こんなに月が綺麗だってんのに」


土「あ？」


沖「おや？こんなでけぇ月の夜だ。
Aがいると想って、
あんたも来たんじゃねぇんですか？」


土「そもそも、ここは俺の喫煙場だったんだ。
あいつにぶん取られたが
いねぇんなら俺が使うまでだ」


沖「の、割には吸ってやせんが？」


土「た、たまたま、切れちまっただけだ！！！」







総悟はそれから、しばらく黙った。
いつもなら、もっと俺を茶化す筈だが。



赤い月に照らされたその眼は、
どこか危うくて



土「……総悟、お前なにかあ、」


沖「知ってやすぜ」


土「あ？なにを？」


沖「…あいつ、知ってやした。
どいつに聞いたのか知りやせんがねぃ」


土「あいつ？どいつ？は？
話が見えねえ。誰が、なにをだ？」







総悟は柱から身体を離し、
月から俺へと視線を移し、







突き刺ささるような声で
言った。






沖「Aが、姉上のことを、でさぁ」






開きかけた唇は渇き、
見開かれた眼は泳ぎ、







総悟は俺の感情を
汲み取る必要もねぇ程に、
余裕そうに笑った。

解せねぇ男 : 沖田→←想像以上 : 沖田

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