だって、わたしがいる【銀魂】4

過去形 ページ28

ぽり…、ぽりぽり。

それから少し、ふたりで
m&msを囓る音だけが響き





その答えは
わたしにそっと降って来た。





沖「俺は姉上だ」


「…、へ？」


沖「兄妹。俺は姉上がいる」


「そ、うなんですか！へぇ…」


沖「……。まぁ、お前にもいるか、兄貴が」


「へ？あ、いや、いませんって、」


沖「いるだろぃ。昔も今も、たくさんな」


「！！…ふふ、ほんとだ。
たくさん、いましたね」



沖田隊長はそうだろぃ、と胸を張って見せる。

沖田隊長が自分から話すとは思わなかったし、
言葉の選択からすると、
話したい訳ではなさそうだったので
これ以上は掘り下げないことにした。



本当は、



すごく、すごく
気になっているのだけれど。




沖「……」





「……み、みんなには、
いるんですかね？
きょ、兄妹とか…」


沖「ああ…ちらほら、いる奴はいるな。
近藤さんと山崎はいねぇな。
……土方さんは、腹違えの兄貴がいたな」


「っ…」


沖「…知らなかったか？」


「ええ…。土方さんは
自分のことを話す人ではないですし」


沖「…だろうねぃ」


「…いた、なんですか」


沖「ああ、もう亡くなってらぁ」


「…そうなんですね、」


沖「俺の姉上も修正だ。いた、だ」


「…！！！？」




沖田隊長の顔を見上げる。
風が冷たく感じるのは、
わたしが冷や汗を掻いているからか。
沖田隊長はわたしの顔を見つめながら、
どこか違うところを見つめていた。

隣に座り、見つめ合っているのに
合間を吹く風は確かで
まるで空間が違うような、遠さだ。




「……沖田隊長のお姉さまはきっと、
とても綺麗な方なのでしょうね」



言葉を選んだつもりはない。
ただ自然と、過去形にならなかっただけだ。



沖「…ああ。そりゃあ綺麗で優しい人でぃ」



沖田隊長はわたしの言葉に
現実に引き戻って来たかのように、
ゆっくりとまた視線が合っていった。



亡くなった人を殺すのは、
哀しみに明け暮れ、過去形になり、
やがて記憶から消してしまう時だ。
忘却という名の死は、
与える側と与えられる側、
どちらが辛いのだろう。




沖「もういねぇけどねぃ。
いねぇ人を重荷にするのは汚ぇやい」


「…へ？」


沖「…そろそろ、風呂入ってくらぁ。
一緒に入りやすかぃ？」


「っな！？は！はいりませんよっ！！！」


沖「お。キャバクラで
少しは女の意識、芽生えたか」



沖田隊長は軽笑ながら、
ふらふらと去って行った。



重荷、


に
しているのは…。

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