気持ちの量 : 土方 ページ27
聞き耳を立ていた、訳じゃねぇが。
なんとなく、そうするんじゃねぇかと予想はしていた。
襖が開き、縁側が少し軋む音がして
何分か経ったが、部屋に戻る気配がねぇ。
俺は吹かしていた煙草を消し、
ゆっくりと立ち上がる。
すっ……
襖を開け、一歩出てみるが
気付かねぇ、A。
その横顔は、久しぶりに感じるあの、
どこかへこのまま消えてしまいそうな表情で
胸がザワつき始める前に俺の足は前へと出ていた。
ぎしっ
「!…土方さん」
土「………、どうした?」
「あー…、お花見、ほんとに楽しかったので
まだ寝付けなくて。久しぶりに月光浴」
土「……そうか。いいか?」
「ええ、どうぞ」
指を差したAの隣に腰掛ける。
声を掛けると同時に色付いた眼は
いつものAに戻っていた。
その姿に一抹の不安を抱えながら、俺は
自分の望まぬ答えが返ってくるかもしれねぇ
想いを、唇に乗せようか乗せまいか思考を巡らせた。
「あ…」
土「?なんだ」
「月、沈んでしまいました」
土「…ああ、」
「あ、ほら。見てください。
桜の花びら。どこから来たのかな」
土「……お前が連れてきたのかもな」
「ああ!そっか!確かに。
服に付いてたのかな」
ふふ、と笑うと
白い掌に乗せ、ふぅっと息を吹きかけた。
花びらはひらっと舞い、
風に乗ったのかあっという間に
夜へと姿を消した。
それがまた、俺の胸をザワつかせた。
土「………っいいのか」
振り絞った声は掠れ、
Aは不思議そうに振り返る。
「…花びら、?」
なんでこうも、てめぇを苦しめんだ。
黙ってりゃ、いいのに。
土「………さっきの、話」
聞かなけりゃ、いいのに。
「……結婚、?」
でも、
土「…ああ。ほんとに、いいのか?」
知らねぇままになんて、出来ねぇだろ。
土「…んとに、俺で……」
覚悟がねぇんじゃねえ。
あるからこそ、
ちゃんと知りてぇ。
気持ちの量なんて、
測り知れるモノでもねぇ。
例え、出来たとしても
日々、変動して当然だ。
満ちれば干れる日もあらぁ。
だが、
欠乏したまま、
気付かねぇまま
綻びから毎日、少しずつ
流れ出てしまったらそれは
もう二度と、満ちねぇってことだ。
「……なんで、今そんなこと言うの」
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ともみ - もう余韻に浸りすぎてただの中毒です笑笑。作者様のセンスが輝いてますほんと。すきです。 (2019年3月6日 7時) (レス) id: 53269475bb (このIDを非表示/違反報告)
美雨(プロフ) - ともみさん» 隙あらば!!どハマり!!見応え…!わたしは今涙で前が見えません…感謝でいっぱいなのはわたしです、なんて嬉しいコメントをくださるのでしょうか!ありがとうございます涙 銀さんオチ、わたしも書きたくなってきました!! (2019年2月19日 0時) (レス) id: 8246142a47 (このIDを非表示/違反報告)
ともみ - 2日かけて隙あらば読んでどハマりしてました!最後に見応えのある面白い作品でした!出会えて感謝です!余韻に浸り、もう一回見ます!笑笑、私的にはぎんさんオチも見たかったです! (2019年2月12日 16時) (レス) id: 53269475bb (このIDを非表示/違反報告)
美雨(プロフ) - 紺15さん» たくさんコメントしてくださり、嬉しいです!最後まで読んでいただき、ありがとうございましたっ!!おまけ程度でもまた少し書けたらなと考えてます。よかったら、また見てあげてください!! (2018年10月24日 11時) (レス) id: 3d5acb8dd8 (このIDを非表示/違反報告)
美雨(プロフ) - なつさん» そんな風に言っていただけるなんて、ほんとに嬉しいです!!少しだけでもまた書けたらと考えています!! (2018年10月24日 11時) (レス) id: 3d5acb8dd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美雨 | 作成日時:2018年10月3日 12時