だって、わたしがいる【銀魂】11

八重桜 : 沖田 ページ2

「ああ！あの公園の？」



Aと見廻りに出た今朝の江戸は
いつもに増して、どこか賑やかで。
ゆっくりではあったが、確実に訪れた
春の足音に胸が踊っているようでぃ。



沖「そう、あの奥んとこが
毎年、真選組の花見場所」


「あそこ、桜の木たくさんありますもんね！
去年、真選組の入隊試験に行く時見ました！
懐かしいなぁ…！！」


沖「あん時はまだ、男でしたもんねぃ」


「…あ、はは、す、すみません…」


沖「やっと同等の野郎が入って来て、
一緒に土方さんを引き摺り落とせると
期待してたっつーのに。
まさか、野郎が実は女だった挙句
土方さんの女にまでなっちゃうとはねぇ」


「ね、ねぇ、何があるか分かりませんね、人生は。
はは、ははは！…ああ！沖田隊長！！ほら！ほら！
あそこ、桜少し咲いてますよ！！」


沖「何話変えようとしてんでぃ。
…ああ、ほんとだ。来週には満開だな」



にやにやといじめて来る、
沖田隊長の眼から逃れようと
眼を泳がせていると
小さく、でも青空に映えるように
咲き誇り始めた、桜を見つける。



「……やっぱり、桜が一番好きだなぁ」


沖「………、そうかい。
桜の花言葉、知ってやすかい？」


「品種によって、多少違いますよね？
これはソメイヨシノ…？何だっけかな」


沖「純潔でさぁ」



沖田隊長は今度はもっと
黒い笑みを浮かべ、笑いかける。
瞬時に意味を悟ったわたしは、
へ、へぇ…とヒクつく。



沖「桜みてぇに純潔だったのにねぇ。
1年でこうも変わりやすかねぇ」


「…せ、精神の美なんて
花言葉もありますよねぇ？
あとは、わたしを忘れないでとか！！」


沖「……へぇ、んなのもあるんですかぃ」


「桜って…不思議ですよね。
はらはら舞い散る中にいると
思い出のあの瞬間に連れて行かれそう」


沖「…俺も、桜には思い出がありまさぁ」



Aはふと漏れた俺の声に顔を上げ、
同じようにぽつりと言った。



「…八重桜、ですか？」


沖「……なんで、」


「…土方さんも前に、
好きだって言ってましたから」


沖「……！」



桜の花びらが、俺と土方さんを
連れ行く、思い出の瞬間とやらは
どうやら、同じ場所のようで。


平気なのか、と
口に出そうとして噤んだ。


Aは背筋を伸ばし、
艶やかに微笑みながら
まだ散るには早い桜を見上げるその姿にはまるで、
必要のねぇ言葉だったから。

耳障りな声 : 沖田→←ピコピコ

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