検索窓
今日:2 hit、昨日:5 hit、合計:33,144 hit

これだ : 土方 ページ37

呑み込んで来た。

傷つかない為に、
生きる為に、

気づかないフリをして

でもそれがやがて、日常になり
傷つく心すら失った。

そして、それさえも
気づいてはいなかった。



「…やっぱり、おかしいこと
言ってますよね、すみません」



俯きながら、小さく首を振り
口角を上げる姿に
ああ、またこうやって。



土「…それ」


「?それ?これ?」


土「いや、枕カバーじゃなくて…。
そうやって呑み込まなくていい。
聞きたいことあんなら、聞け」


「…え、と」


土「ちゃんと聞くから」



俺が言うと、Aは時間をかけて眼を見開き
風に踊る髪を、鬱陶しそうに指に絡ませ
戸惑っている様子で顔を隠した。

誰に零したこともねぇのだろう。
ただの一度も。



「……わ、からなくて。その、
わたしって、何だろうって
お、おかしなこと言ってるのは
分かってるんですけどでも、
考えたそれが、これ、ほんとに
わたしが思ったこと?
わたしはどう考えてた?って、わからなくて」


土「うん」


「でも、じゃあ、自分の考えは想いは
なんなんだって言われたら
やっぱりそれも、わたしが考えたことで
ほんととか偽物とかないんじゃないかなって」


土「うん」


「……でも、ここで
暮らさせていただくようになって
たくさんの人と話して
ああ…、違うって」


土「うん」


「全然…、わたしとは違うって。
眼の当たりにして…、ちょっと苦しくなって…、
気づかなきゃよかったなとか、
思ったりもして……」


土「…そうか」


「違うなって感じるってことは、
いいなぁって羨望するってことは、
わたしは皆さんのようには
なれていないんだと、実感して…」



握り締めるシーツに視線を落として、
震える睫毛が弱々しい。
手繰り寄せた言葉もたどたどしく、
故に真に迫る想いを感じた。



土「…俺は、」


「……」



大きな黒い眼が俺を見上げる。
ほんと、迷子の猫みてぇ。



土「そうは想わねえ。
気づきは、眼の前が見えなくなる壁じゃねえ。
気づきは、スタートだ。
気づけたんなら、もうそっから始まってる。
足を踏み出しゃいいだけだ」


「………土方さん」



迷子の猫はまだ不安そうに
俺を見つめる。
俺はふっと息を漏らし、
その頭に手を置き、撫で回す。



土「俺たちが…、俺が
手、引いてやっから。んな顔すんな」



怯え、強張り
不安がっていた顔が
あの、蕩けるような

笑顔に変わっていく。

ああ、そうか。
これだ。


俺はこの笑顔を守りてぇんだ。

異常 : 銀時→←大変な仕事 : 土方



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (56 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
110人がお気に入り
設定タグ:銀魂 , 坂田銀時 , 土方十四郎
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

美雨(プロフ) - 宙さん» あわわ…!なんと嬉しいコメント!ありがとうございます!細かく考えているのに忘れたりと矛盾箇所も出てたりしますが最後まで頑張ります!ありがとうございます!! (2019年9月14日 0時) (レス) id: ad41125a5f (このIDを非表示/違反報告)
- ほんとに、ほんとに、面白いです。色々なことを細かく考えて書いているんだろうなぁって思ってすごく尊敬しています。これからも頑張ってください! (2019年9月13日 22時) (レス) id: 2dea61ff35 (このIDを非表示/違反報告)
美雨(プロフ) - 狗冰さん» わああ!わざわざ、ありがとうございます!文才がないのに苦しみながらも頑張ってます汗 最後まで楽しんでもらえるように頑張ります!ありがとうございます!! (2019年9月4日 20時) (レス) id: c9e3b5a9e5 (このIDを非表示/違反報告)
狗冰(プロフ) - めっさ面白いです!楽しく読んで気がついたらもう4に!?小説を書く文才をわっちにも分けて欲しいでありんす。この作品を最後まで応援しているので、更新頑張ってください! (2019年9月3日 23時) (レス) id: aa5a4ed97b (このIDを非表示/違反報告)
美雨(プロフ) - 光華さん» はわわわ…!コメントをいただけるとほんとに恐縮してしまいます…でも、頑張らないとー!とやる気が上がります!楽しんでいただけるよう、最後まで頑張ります!!ありがとうございます泣 (2019年8月13日 23時) (レス) id: c9e3b5a9e5 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:美雨 | 作成日時:2019年8月4日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。