この手を離すな【銀魂】4

数多くの意味 : 土方 ページ13

異「四辻は文字通り、懐柔して来た。
自身が手懐けやすい人選を」


平「四辻の部下たちは皆
親に捨てられ、拠り所のない人ばかりでした。
そこに漬け込むのはあの人なら、容易かった」



言葉匠に弱みを晒させ
あの、人の良さそうな笑顔で
何百人を己の配下にした。
一代であれだけを成し遂げたことは
事実であり、また
境遇に寄り添えるのも事実だ。



平「…御察しの通り、懐柔されました」


土「上層部のエリートさんがか」


異「エリート通し、
通ずるところでもあったんですかね。
冗談です、そんなに睨まないでください」


平「今回はすぐに措置できたので、
事なきを得ましたが
俺の見た、四辻の姿は
仕えていた時と何ら変わりません。
身体的なモノではなく、心理的な意味で。
あの人はまだ、何も諦めてない…」



デスクの上で握られた手は
爪が食い込んでいるだろう程に握られ、
俯いた眉間には、苦悩の皺が刻まれている。
そこには恐らく、数多くの意味が存在する。



異「これを機に、四辻事件に関わる
エリート隊士の人員をすべて変えています。
故に先ほども述べましたが、
獄門についてはなかなかに進まない」


土「話は分かった。
何かあれば、真選組も使ってくれ。
出来るだけ、さっさと獄門にしたい」


異「同感です」


平「………」


土「……平太」


平「っ…はい！」



浮かない顔の平太は
ワンテンポ遅れて、俺に返事を寄越す。
浮かない理由もその葛藤も
理解してやれない訳ではない。



土「助かった。俺を呼んでくれて。
知る事が出来れば、対応も変わるし
お前も俺も…俺たちも、同じだ。
Aの今を脅かす真似だけは
極力、避けてえ。
今後も何かあったら、都度俺を呼んでくれ」


平「……っはい！！」


土「お前も頼む。
Aの耳には
奴の名前すら、入れたくねえ。
次、奴の名前を聞く時は
獄門時だけだ。いいな」


異「異論ありません」



煙草を灰皿に押し付け、
帰ろうと立ち上がる。
一瞬、手を止めて
冷めてしまった茶を飲み干す。



土「ごっそうさん。
…身体、出来上がってきたな。
頑張れよ」


平「…！は、はい！！
土方さんみたいになれるよう、
鍛錬に励みます！！！」


土「おう」



剣ばかりではなく、銃の鍛錬もしましょうと
異三郎の嘆き声を背中で聞きながら
部屋を出る。



土「…見送りはいらねえぞ」


信「するつもりもない」


土「そうかよ」


信「彼の思い、理解してあげて」


土「…ああ、わぁってる」

ぞわっ→←自信 : 土方

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