この手を離すな【銀魂】4

暗示 : 銀時 ページ39

銀「藤野さん、藤野さん」


藤「うっせぇな！
くっちゃべってねえで手動かせ！
四辻様が抱える大事な案件なんだぞ！」



翌日、四辻の仕事を受け継いでいる
部下どもが持ってくる、
書類の山の仕分けを藤野と担当している。
この様子だ、あの部屋には入ったこともないし
あの隠し扉の向こうも見たことはねぇんだろう。

いや…、

この屋敷の誰かしらが見ていたとしても
四辻がおかしいだなんて、一ミリも
考えやしねぇんだろうな。こいつらは。



銀「今夜、吉原に行きません？」


藤「はぁ？」


銀「いや、だって藤野さんも独り身でしょ？
さすがにこんなに篭って仕事ばっかりしてたら
身体も鈍ってくんじゃねぇっすか」


藤「お前と違って、俺にゃ
鈍るヒマもねぇんだよ。
吉原なんて、誰があんな汚いとこ行くか。
あの性悪女がいたところだろ？
あんな女しかいねぇと思うと気分も害されるわ」



どうせ、本音では行きたくて
仕方ねぇくせによ…。



銀「前、言ってたじゃないですかぁ」


藤「ああ？何をだ」


銀「ここで、裏切り？をして
吉原に売り飛ばされた奴がいるって。
その子はまだいるんすかね？」


藤「……なんでそんなこと聞く」



藤野が手を止めて、俺を睨む。
疑われんのは厄介だ。



銀「いや、俺一人でも
行こうと思ってんすけど
万が一、その子に当たったりでもして
藤野さんの話でもしちまって
気不味くなったら、萎えるじゃないですか」



ははは、と笑う俺にため息を吐き
藤野はまた手を動かし始める。
元は放浪人。四辻が手を差し伸べなきゃ、
生きていたかも分からねえ男。
こいつの眼はどことなく、
誰のことも信じてやしねぇ感じが
Aちゃんを思い起こさせる。

唯一、違うのは藤野は
四辻だけは信じきってるってとこだ。



藤「あの女が売られた店までは知らねえ。
そもそも、やっと見つかった両親に
今まで世話してやった生活費を支払えと命じたら
さっさと吉原に売り飛ばしてくれと言われた女だ。
あの親は、やっと見つけた自分の子どもを
金づるくらいにしか思ってなかったんだろ。
吉原に行かなかったにせよ、
身投げでもしたんじゃねえのか」



ああ、なるほどな。


そうやって、ここから出て行く奴に
とことん、絶望を味合わせ

ここに残る奴らに
とことん、絶望を見せ付けて来たのか。


ここが一番、安全だ。


そう、暗示をかけて来たんだ。



藤「四辻様に拾われた奴ぁ、
命尽きるまで四辻様に仕えるべきだ。
四辻さまを守るんだよ」

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