誰しもが : 土方 ページ19
しどろもどろになるAの呼吸が
間近にあることを今更に感じ取る。
俺の身体に重なる温かさや、柔らかさを
今更に俺は、感じ取って…いて…。
腕を立て、かろうじて
上半身を上げている俺に
馬乗り状態のAは
おそらく、未だにこの状態を感じ取らず
言葉を濁しながら、あたふたしている。
いや、あたふたしてぇのこっち。
なんだ、この状況。
あれか、あれなのか。
むしろ、この状態は感じ取ってるけど
こんなものは何の問題にも
ならねぇとでも言うのか。
俺的には大問題なんだけど。
暗くてよく見えなかったが、
暗さに目が慣れて来て、
超至近距離に大きな眼を泳がせている、
(名前)がいるんだけど。
しかもそこ、おおお俺の上なんだけど。
「…その、ひ、土方さん、
出られていたので
お食事を取られたのか分からず、
万が一、食べられていなかったらと
思いまして……」
土「は…？え、俺、の為？」
「た、為というか、
必要かどうか考えたら
すぐにご用意できないと
わたしのいる意味がないと思いまして！」
土「…………とにかく、
悪い。ちょっと…ち、近ぇ」
「え？あ！すみません！
ずっと乗って…！」
Aはその
軽すぎる身を
ひらりと俺の上から翻す。
温かさが離れ、身体が
あっという間に冷えていく。
土「…そうか……」
「え？」
土「んな風に考えてたんだな…」
自分の存在する意味、
なんて
人生で一度は誰しもが考得ることだが
Aは、何度となく
その疑問を抱えて来たのだろう。
誰しもが、ふと思い浮かべることを
Aはずっと隣に置いて
気づかないようにするでもなく、
怯えるでもなく、
ただただ、当たり前にいつも
生きていることに
疑問を抱いて来た。
土「……………」
「？あの…」
土「もう、ねぇと思ったんだ。
最近、どいつもこいつも
ここで食うからよ」
「……」
土「でも、用意してくれんだな。
これで夜の見廻り後も
腹を空かしたまま、寝ずに済む」
「…！じゃあ、」
土「悪いが、腹減って立てそうにもねえ。
持って来てくれっか」
「…はいっ！」
土「待て！またお前は…。
電気つけてからにしろ」
「あ、そうでした…。すみません」
へへ、と笑いながらも嬉しそうに
食堂の半分電気をつけて
厨房へ向かうA。
俺は、膨れた腹を
ぽんぽんと二度叩き、
隊服の上着を脱ぎながら椅子に座る。
あの屋台のおっちゃんに
また来るわ、と言ったが
当分、行かなくなりそうだ。
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美雨(プロフ) - シリアス系の人さん» 更新が滞っていたのにコメントいただけて、嬉しいです！ありがとうございます！ゆっくりにはなってしまいますが頑張ります！！ (2019年6月23日 22時) (
レス) id: c9e3b5a9e5 (このIDを非表示/違反報告)
シリアス系の人 - いつも見てます！更新頑張ってください！ (2019年6月23日 19時) (レス) id: 3f134b9658 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：美雨 | 作成日時：2019年5月19日 23時
