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万が一 : 土方 ページ50

銀「……そうか」



万事屋は落とすように吐くと、
項垂れるだけで黙り込くった。
その背を見つめるガキ共と、
眼を合わせ、眉を下げる日輪たち。
そんなことも気にならねぇ程に
俺の中でざわざわと
先程抱いた、勘が明確化していく。



土「…っち、」



がたんっ



新「土方さん…っ!?」


神「何アル、何も言わず…」



声が聞こえたが
振り返ることもせず、走り続ける。

何がある訳でもねぇ。
出張先でも四辻に怪しい動きはなかった。
ただ、ただ勘が働く。
理由はそれしかねぇ。

屯所に走り込もうとした時、
山崎が入っていくのが見えた。



土「…はぁっはぁ、山崎っっ!!」


山「へ?えっ!副長!?
そんなに急いでどうしたん、」



がしぃっ



山「ぐぇっ!?」


土「結婚の予定はあったか!?」


山「え、えっ!?」


土「四辻宗介だ!
あいつに結婚の予定はあったか!?」



襟元に掴みかかり、屯所内の壁に押し付ける。
山崎は何のことか分からないという顔で怯える。



山「よ、四辻にですか…!?いえ、
そんなものはなかったですが…、」



だんっ



山崎を離し、俺はもう一度思考を巡らせる。



山「けほっ…!こほ!
一体何なんですか、副長…副長?」


土「…一度だって
上がらなかった話だよな」


山「ええ。言い寄る、良家の娘や
取引先の娘は腐る程いましたが
全部、蹴ってようで」



じゃあ、何故…。



山「それに、もし四辻が結婚するとなったら
かなり前から
段取りを組み立てる必要がありますよ。
立場的にも仕事上、多くの取引先に
先に伝え、根廻ししなければならないだろうし…」


土「ああ。そこだ」


山「そこ?」



結婚を急ぐ必要がどこにあった。
新しい事業で関西を忙しなく廻り、
帰宅した後に決めることか。
他の男にAを身請けさせねぇ為か。
だが、この町に奴ほど金を持ってる男などいねぇ。

何を、焦る必要があった。



山「四辻が結婚するんですか?」


土「……吉原の遊女を破格の値で身請けした」


山「…えっ!?
これから、事業拡大していくっていうのに
金も時間も使ってる場合じゃ、」


土「ああ。あいつが急ぐ理由はなんだ」


山「分かりませんが、
四辻の疑いは晴れましたよね?」


土「嫌な予感がする」


山「…副長……」



俺はもう一度、
山崎の襟元を掴み上げ眼を合わせる。
万が一、
そう思い始めたら、もうどうしようもねぇ。



土「再度、四辻を洗う。
隊は動かさねぇ。ここだけの話だ、いいな」

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作者名:美雨 | 作成日時:2019年2月27日 23時

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