検索窓
今日:15 hit、昨日:7 hit、合計:149,921 hit

やっぱりどこか ページ44

四「A、鞄を」


「あ、はい!」


四「平太。トランクに入れて
車を出してくれ」



慌ただしいまま、別れを済ませ
外に出ると黒い大きな車が停まっていた。
この車が四辻さまのモノだということは
誰もが知っていて、見かける度
遊女たちは一斉にはしゃいだものだ。
その車横から現れたのは
髪をぱつんと切ったように切り揃えた、
若い男の人だった。



平「はい!」


「…は、初めまして。
すみません、ありがとうございます!」


平「平太です。
下人をやっていますので
お気になさらず」


四「平太は私の側近だ。
何かあれば、Aも平太を頼りなさい。
歳の頃もそう変わらんだろう」


「…平太さん。
わたしは、Aと申します。
よろしくお願いします!」



ばたんっ



平「こちらこそ!よろしくお願いします!
さっ、車に乗ってください」



平太さんはドアを開け、
わたしと四辻さまを車に乗せる。
これが車の中なのか、と思う程広く
どこに座るべきか悩んでいると
四辻さまが手を引き、隣に座らせた。
運転をする平太さんが随分と遠く、
またガラスで遮られていた。



四「Aも当主の嫁になるのだ。
少しずつでいい、
下人の扱いにもなれていかないとな」


「わたしなんぞに出来るとは思えません…」



くくく、とおかしそうに四辻さまが笑い、
下ろしっぱなしの髪に指を絡ませた。



四「いつもの姿にも見惚れていたが、
今宵は格別だ。綺麗だ…」



車のエンジン音で掠れたが、
確実にわたしの耳に届いたその声は
化粧も飾りも施していない、
わたしの頬を赤くさせた。



「…っあ、」



唇を塞がれ、指が滑り逝く。
思わず、漏れた声に
自身が肩をビクつかせ
遠くで運転している平太さんに眼をやる。



四「後ろの声は聞こえないようになってる。
気にする必要はない…、こっちを向いて、、」


「…っ四辻さま、」



わたしを抱き寄せる腕も
肌を滑る指も息も、そして眼も
とても熱い。
何故だろう。慣れているのに。
場所だろうか、立場だろうか、
生娘でもありはしないのに
わたしの頬は更に赤く染まる。



四「…っとだ、」


「…え」


四「やっと…どれだけ、どれだけ欲しかったか。
やっと、やっと手に入れられた。
私だけの…Aだ。ああ…、
もう何も望みなどしない。…A」



零すように熱い息と共に、
わたしの首元で囁く声。
色っぽく、そしてやっぱりどこか
焦りが滲んでいるように感じた。

身の丈→←商品ではなく : 月詠



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (36 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
112人がお気に入り
設定タグ:銀魂 , 坂田銀時 , 土方十四郎
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:美雨 | 作成日時:2019年2月27日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。