上手に傷つけるのも、 ページ25
鏡に映る自分の顔が
どこか複雑なのは、
?「入るぜー」
この人の優しさを
利用してしまっている、自分に
気付いてしまったから。
「…はい」
す…
銀「よっ!」
にかっと笑いながら、
部屋に入ってくる銀時さんに
曖昧に笑って応える。
そもそも、遊女と客など
利用し合って成り立つモノで
そこに憐れみや嫌悪など
まるで似つかわしくないのだけれど
分かって、いるのだけれど
銀「元気してた?つっても、
一昨日逢ったばっかだけど」
彼のこの、屈託のない笑顔を
これ以上、奪いたくない。
「ええ、銀時さんは?」
銀「元気、元気!超元気!
…あ、でもよ、ちょっと気になることがあってよ」
「?何ですか?」
銀「違かったら悪ぃ、最近
警察が入ったりしてねぇか?
何か事件に巻き込まれたりとか、
大丈夫か?」
誰から、聴いたのだろう。
土方さんにも日輪さんにも
他言しないよう言われているのに。
「ええ、わたしは別に」
銀「そ、そうか!よかった…。
ずっと心配でさ」
「ふふ、ほんとに…
銀時さんはお優しいですね」
銀「え?いや、そうかな?
友達のこと心配すんのは当たり前じゃね?」
くくく、と恥ずかしそうに笑う。
友達。
利用するのは、友達とは
呼べない、よね。
「銀時さん」
銀「へ?………、ど、どうした?」
銀時さんに向き直って座り、
真面目な顔して見つめるわたしに
銀時さんも何事かと
わたしに向き直る。
「もう、来ていただかなくて
大丈夫ですよ」
銀「………え、」
「銀時さんの優しさは、
十分にわたしに伝わりました。
どう考えても、今のわたしは
銀時さんの優しさを利用しています。
そんなの、友達とは呼べませんよね?」
銀「………、」
「わたしにとって、銀時さんは
他のお客さまとは明らかに別格で…、
でも、わたしは銀時さんに何も出来ない。
わたしばかり、利用しているのは、、」
そこまで言って、口を噤んでしまった。
なんと言葉にしたらいいのか、分からない。
彼を傷つけたい訳でも
困らせたい訳でもない。
おかしいな。
男の人を上手に傷つけるのも、
少し困らせてみるのも、得意な筈なのにな。
わたしは、銀時さんと
友達、でいたいのかな。
銀「そっか…、ごめんな」
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作者名:美雨 | 作成日時:2019年2月27日 23時