捜査 : 土方 ページ19
土「よう、邪魔すんぜ」
日「あ！土方さん！電話の件ですよね。
どうぞ、こちらの部屋で待ってて貰えますか？
今呼んできますので」
土「悪ぃな」
昼間っから、ここ
吉原に来る理由はひとつ。
捜査だ。
にしても、さっきの万事屋の野郎は何だったんだ。
随分、必死だったが。
通された部屋に向かっていると、
髪を下ろし、薄手の着物姿の
着飾っていない、
遊女らしい女と数人、すれ違った。
夜に働く女。
俺たちが働く昼間がオフになるのか。
どうにも、居心地が悪く
部屋に入り、襖を締める。
他の奴らに誘われて、まあ
俺も何度か来たことがあるが
夜と打って変わって、静かで
艶っぽく見せられていた部屋も
何てことはない、今は普通の部屋だ。
「…失礼します」
木漏れ日が心地よく、
少しぼんやりしていると
透き通った声が俺の耳に届いた。
土「おう」
すす…と遠慮がちに開いた襖から
胸まで下ろした黒い髪と
白い肌の女が一度、部屋を覗いた。
「…わたしがAと申します。
日輪さんに言われて参りました」
土「俺は真選組副長、土方十四郎だ。
悪いが少し、話しを聴かせてもらいたい」
「……はあ、わかりました」
不安そうに
その大きな黒い眼を一度、泳がし
部屋に入り、襖を締め
俺の前に座った、Aという女は
先ほど、すれ違った遊女らしい女共と比べても
また、夜に並ぶ遊女たちと比べても
まるで、別の生き物みてぇな
雰囲気を漂わせていた。
日輪が『彼女は特別なので、
上客相手しかしません』
と言っていた理由がすぐに分かった。
顔は陶器のように作りモノのみてぇに綺麗で、
漏らす声は遠慮がちに、でも透き通るように響き、
そして、
「……あの、土方さん？」
俺を見上げた大きな眼は
底知れぬ、熱情を潜ませていた。
土「…あ、ああ、悪い。
Aと言ったな。四辻宗介を知っているか」
「…四辻さまはわたしのお客さまですが」
土「医師でもあり、豪商であることは？」
「ええ…存じております……」
土「Aに仕事の話しもするのか？」
「いえ、何をしているかは存じ上げません。
週末に遠征する、とかくらいしか。
ただ、何度もわたしを買ってくださっているので
富裕な方なのだとは思っていました」
土「…遠征か」
「…？」
俺は俯いた顔を上げ、
もう一度、Aの眼を見つめる。
じっと俺を見つめる仕草に
少しだけ、咳払いをして聴く。
土「お前、遠征場所を聴き出せるか？」
秘密を打ち明けられたかのように : 土方→←おかしくもなる : 銀時
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作者名：美雨 | 作成日時：2019年2月27日 23時
