一欠片とて :銀時 ページ10
それから、
何時間話し込んだんだ。
途中、何度か
布団に視線を送るAちゃんに
俺はもちのろんで気づいていたが
そんなこと、そんなこと!出来る訳もなく
俺は必死に言葉を手繰り寄せ、
浴びて飲む程の酒も追いつかない程に
喉を枯らして、話し続けた。
気づけば、障子の向こうは
水色に染まり出し
酒もすっかり、底をついていた。
そして、
分かりやすく
俺は
「……もう、朝になりますね」
そんな科白を
さも、悲し気に
切な気に言ってみせる、
彼女の横顔に
惚れちまっていた。
何時間話していても、
彼女の素は一欠片とて見せてもらえなかった。
バカみてぇにべらべらと
俺が話すことにくすくす笑ったり、相槌を見せるだけで
楽しそうにしてくれることが嬉しかったが
横目で盗み見ていて、分かった。
彼女のどこか、作られたような
少し近寄りがたい、人形のような佇まいは
演技なのだろう、ことが。
いや、
これは彼女が遊女として得た、見せ方で生き方なんだろう。
故に演技でもないのかもしれない。
友達を持ったことがない彼女の素は多分、
誰も見たことがねぇんじゃねぇか。
銀「……っAちゃん、」
「…!はい?」
突然、声を上げた俺を
真っ直ぐ、捉えるその眼を
ずっと、俺に向けておきたいだなんて
朝になって漸く、酒でも廻ったか。
銀「……また、」
「……?」
銀「また、来ても…いいか、な…?」
蕩けるように微笑んで、
「………はいっ!」
って答えたそれも、
いつもやって見せてるんだろうか。
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作者名:美雨 | 作成日時:2019年2月27日 23時