線 : 月詠 ページ13
月「日輪、閉め終わったぞ」
日「ええ、ご苦労様」
本日の営業を終え、
また夜に向かう為に
遊女たちを休める。
月「あいつは帰ったのか」
日「ええ、しっかり勤めてくれたみたい」
月「Aなら、
どんな奴相手でも勤めてくれる」
日「いいえ、銀さんの話」
月「銀時が…?」
日「ええ。ねえ、月詠。
Aさんの笑ったところ、
見たことある?」
月「そりゃ、あるじゃろう」
日「そうね、でもそれは
彼女がほんとに笑いたくて笑った、
笑顔じゃないでしょう?」
月「…!……そうじゃな」
日「鳳仙がいなくなってからもずっと、
彼女だけが変わらない。
わたし、見たいのよ。彼女の笑顔。
絶対、可愛いと思わない?ね?」
日輪はまるで、母のように
心を弾ませている。
月「うむ、銀時など
一瞬で落とせる程に
可愛いじゃろうな」
日「ふふ、それについては
作られた笑顔でもそうだったかもね」
月「まぁ、A相手じゃ、無理もないが…
あの阿呆、Aが上物しか
相手にせん、花魁だと知らぬのか…」
呆れきっていると、日輪は
ひとつお願いがあると顔を上げた。
日「これからももし、銀さんが
Aさんに逢いに来たら
ツケ払いにでもして、通してあげて」
月「は、はぁ?何を言っておる、日輪!!
彼奴のことじゃ、すぐ調子に乗るぞ!」
日「銀さんの為じゃないのよ。
Aさんの為に、お願いしてるの」
月「…Aの為……、はあぁ。
仕方ない…。他の者に怪しまれぬよう、
わっちが上手くやっておく」
日「ふふふ、ありがとう、月詠。
月詠も何だかんだ、Aさんが可愛いのね」
月「だ、黙らんし!」
日輪の部屋をバタバタと飛び出し、
ふと禿時のAを思い出す。
歳は14、5だったか。
幼き頃に親に売られ、
長くこの世界にいるからか
その眼に生気を感じられず、
また誰一人、その線から先は
入らせようとしなかった。
今は少しばかり、
眼に力を感じるようになったが
月「彼奴なら、あの線
越えられるか…」
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作者名:美雨 | 作成日時:2019年2月27日 23時