二十六 ページ27
その会話を耳にした拙者は、
咄嗟に髪を解いた。
戸がゆっくりと開けられる。
恐らく拙者を女子と勘違いしたのであろう
奴────その浪人武士は、油断しきった声で
「何用であるか、小娘」と。
「あ……?」
──言い終える前に、拙者は奴を斬り捨てた。
キン、と一旦、刀を鞘に納めてから。
其奴が前倒れになっていくのを避け、
横を通り抜け屋内に侵入する。
「ッ、なんだお前────…………はっ……?」
待機していた二人の位置を視認して、
その奥にもう一人──Aが倒れているのを
確認してからは、疾かった。
身を低くして、抜刀し
眼に捉えた愚人に切傷を与えた。
あまりの疾さから、二人は未だ
己が斬られたことに気付いておらぬようであった。
「ウグッ、ぁあ゛あ゛!!!」
「な、にが…………!?」
一拍遅れて、傷から血が噴き出して
土間に膝をついた浪人たちが痛みを感知し
苦しみ、叫び、藻掻き出す。
拙者はそれを後目に、
一直線に奥へと──Aの元へと進む。
「A……!!」
床に転がされたAは、
手の色が変わるほど両手をきつく縛られ、
ぐったりと気を失っている。
肩や太腿が出るほど浴衣を崩されており、
額には痣があって、至る所から血が滲んでいる。
それにAはぐっしょりと濡れていて、
匂いから察するに酒を浴びせられたらしかった。
家の中は至る所に血が飛び、荒らされ、
写真立ては踏まれたようにひび割れ、
彼女の宝が入っているはずのブリキ缶も
蹴られたのだろう、凹み、中身が散乱していた。
生まれて初めて、
怒りで目の前が真っ赤になった。
「……貴様……ッ、何者だ……!」
浪人たちがゆらりと立ち上がり、
拙者に刀を向けているのを背後に感じる。
拙者はそれを気に留めず、
Aの脈と呼吸を確かめ、
相当に悪い状態であると分かり眉を顰める。
どうかもう少し耐えてくれと
手の紐だけ解いてやってから、拙者も立ち上がる。
「おい、聞いてるのか!」
「……なぜこのようなことをした」
静かに問えば、
浪人は「何の話だ?」と間の抜けた返答を寄越す。
拙者は奴らに向き直り、
もう一度、低い声で問い掛ける。
「何故、彼女を傷つけたのかと聞いている」
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思雲@誤字る塩(プロフ) - …????????え、夢主ちゃん…????こんな切ない、悲哀系だとは分かっていたけど、ここまでだとは…万葉の言動心理表現が上手すぎですね…!?とても儚い素敵な作品でした…この作品を制作してくださって本当にありがとうございました。これからも創作活動頑張ってください。 (2023年2月3日 0時) (レス) @page33 id: 658471da89 (このIDを非表示/違反報告)
?? ?りく? ??(プロフ) - あれ…目から水元素が…。最高でした。 (2022年12月4日 20時) (レス) @page33 id: 52489b2aa2 (このIDを非表示/違反報告)
ri_syen(プロフ) - もう涙がとまらなくて…( ; ; )最高の小説です (2022年10月5日 21時) (レス) @page33 id: 4f69967d38 (このIDを非表示/違反報告)
こーひー(プロフ) - 涙が...すごい好みドストライクな作品でした。うう...涙が止まりませんでした...切ない... (2022年8月17日 22時) (レス) @page33 id: da21190636 (このIDを非表示/違反報告)
Re:(プロフ) - 午後の紅茶さん» コメントありがとうございます。お名前からして水分が抜けちゃうとえらいことになりそうですね…笑 しっかり水分補給してくださいませ🍵 ありがとうございます、頑張ります! (2022年8月8日 2時) (レス) id: 7f1d8b0622 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Re: | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2022年7月19日 16時