50 ページ5
.
2人の間にある微妙な隙間を
冷たい風が通り抜けていく。
『ねぇ、海人に何か言われた?』
「……海人、なんか言うてた?」
『いや……、でも喧嘩してたの2人でしょ?』
海人の目が、脳裏に蘇る。
しょうもない小競り合いは
数え切られへんくらいあるけど
こんなガチの喧嘩は、たぶん初めて。
いつも明るくて笑顔の絶えへん海人。
喧嘩なんて、あいつ一番似合わんのに。
………俺が、そんだけ怒らせたって事よな。
その上、こんな場所に逃げて。
俯くと、紫耀がそんな俺の様子を
心配そうに窺ってるのが、雰囲気で伝わってくる。
.
「……なぁ、紫耀はさ、」
『ん?………何?ゆっくりでいいよ』
言葉に詰まる俺の頭に、紫耀の手が乗って
ぽんぽん、と優しいリズムが降ってきて
途端に胸がきゅんと疼く。
どこまでも優しい。
この優しさに、俺はいつだって甘えてきた。
でも、もうあかん。
これ以上、紫耀を苦しめたくない。
これ以上、残酷な奴になりたくない。
「しょお、は……」
『うん』
「俺と、おるのは……っ辛いんやろ?」
『え?』
俺の言葉に、紫耀が目を見開く。
"海人あいつ何言ったんだよマジで……"
そんな小さな呟きが、
溜め息と共に耳を掠めた。
俺の頭を撫でていた紫耀の手が、
頬にするすると降りてくる。
ひんやりした空気の中、紫耀の手が温かくて、
一瞬、目を閉じそうになった。
.
『………辛いって言ったら、どうする?』
聞き慣れたハスキーボイスが
普段よりも低く聞こえた気がして、ハッと顔を上げれば
あの日、紫耀の部屋で抱きしめてくれた時と同じ
優しくて、愛に溢れた瞳が
どこか悲しげで。
『…………ごめん。いじわる言った』
紫耀はそう言って、切なく笑った。
また、泣きそうな顔で笑っていた。
自分の残酷さを、これでもかと思い知る。
"俺とおるのは辛いんやろ?"なんて、
肯定したところで、
紫耀は、
俺から離れるなんて選択、出来へんのに。
追い詰めて、追い詰めて、
苦しめて、
……俺は、最低や。
.
1765人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あい(プロフ) - 完結おめでとうございます!素敵なお話でした、(T . T)もう始終涙が止まらず、とんでもない顔でお話を読んでいました笑 久しぶりにこんな甘いお話に触れられて、幸せ者です!これからも、応援しております♪ (2022年4月29日 13時) (レス) @page29 id: 74fb46b4d8 (このIDを非表示/違反報告)
あきこ - お久しぶりです。切ない気持ちがすごく伝わってきて良かったです!2人の表情まで想像できてキュンとしました!!紫耀くんの心の広さ、見習わなくては(笑)楽しませていただきありがとうございます。 (2021年5月16日 9時) (レス) id: a6652d343c (このIDを非表示/違反報告)
こでまり(プロフ) - 本当に素敵な作品ですね。不器用な2人がお互いを思い遣るが故のもどかしさ、メンバーの愛に涙が止まらない作品です。素敵なお話ありがとうございました。 (2021年4月20日 12時) (レス) id: 47561d5dfc (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみ(プロフ) - ななみさん» コメント頂きましてありがとうございます(^^)私もじぐいわ大好きです。最後に少ーし匂わせたつもりでした笑。妄想はいくらでも出来ますがリアルのじぐいわには敵いません!こちらこそ、お読み頂きありがとうございました。新作でもお待ちしております(^^) (2021年4月16日 0時) (レス) id: f4acf235ea (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみ(プロフ) - 由夏さん» コメントありがとうございます。返信が遅くなり申し訳ありません。しょうれんはやっぱり一緒にいるのがしっくり来ますね(^^) (2021年4月16日 0時) (レス) id: f4acf235ea (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ゆうみ | 作成日時:2021年1月11日 0時