愛を知る時〈深紅×漆黒〉２

じんくんの憂鬱 ページ22

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『……でさぁ、その後もずーっと引きずって笑ってんの。すっげー可愛くない？』


「………」


『あとさーこないだの撮影の時なんだけど、』


「………」


『ほらこれ！この衣装めっちゃ似合ってたんだよ〜！廉ってやっぱ華奢だからこーゆう衣装似合うよな』


「………」


『あー可愛い』


「………………はぁ……」







だいぶ慣れたつもりだったけど

久々に聞くと胃もたれがやばいな。









お互い個人の仕事も忙しくて、久しぶりのサシメシ。




馴染みの店の個室で、

飲み物やメインの料理も運ばれてきて

しばらく店員さんも来ないだろうという頃



紫耀の口からこれでもかというほど出てくる







"廉廉廉れんれんれんレンレン"………









もはや紫耀が俺を食事に誘うのは

廉がいかに可愛いかを熱弁したいが為じゃないのか？



とさえ疑いたくなる。






最初こそ他のメンバーのエピソード混じりに

廉の名前が出てくる程度だったけど





いつからだったかな、




お前の中で今日は廉としか会ってねーのかよ、

ってくらい、


廉のことしか喋らなくなったのは。









「俺に言わないで本人に言えよ」





普段は聞き役に徹するけど

時々そうやって意地悪に言ってみると


それまで饒舌だったのが途端に黙り込んでしまう。






普段仕事で堂々としてる姿とは似ても似つかない。








「拗らせてんなー」


『うるせ』


「これからも一緒だしね」


『いや追い打ちかけないで？』








好きなのかとはっきり聞いた事はないし

紫耀だって言った事はない。





でも、

メンバーや弟を愛でるようなレベルじゃないその口調に

自然と紫耀の想いに気付いた。




いや、うん、


気付かない方がおかしい。







でも、その気持ちを伝えるつもりは


たぶん一生ないんだろうなっていうのも

同時に気付いた事だった。







きっと、自分が伝える事で廉が苦しむのを

紫耀は望んでないんだろう。




紫耀は、そういう奴だ。








だから、まぁ、俺が話を聞くぐらいは何でもないよ。




耳にタコが出来て溜め息つく時もあるけど。









「まぁ廉が可愛いとこあるのはわかるよ」


『ちょっと俺の廉をそういう目で見ないで』


「見てないし、そもそもお前のじゃねーし……」








怖すぎるわ。







廉もそろそろ気付けばいいのに。





俺の平穏の為に。
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