家に、北山ってやつが住み着きました。2

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藤ヶ谷side





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玉｢はい、あーん｣




『……いやだってば』




玉｢あーん｣




『……ん、おいひい』







俺は一体何を見せつけられているんだろう




どやって顔して俺を見てくるたまはむかつくけど、メロンを頬張り美味しそうに唸る北山はとても愛おしい






『たま、そろそろ時間じゃない？』




玉｢……もう少しだけ｣




『駄目でしょ？お客さん待ってるよ』






もう1時間もしない間に喫茶店の開店時間に差し掛かる




帰りたくない雰囲気全開のたまに、北山は｢行ってらっしゃい｣と笑って言う





その言葉に一瞬ドキッとした俺は、目線を北山から外して下を向いた



この間までは当たり前にあった言葉を、今北山は、俺ではない他の人に告げていて





その他の人が、俺の代わりに｢行ってきます｣と口にする








｢……｣




『藤ヶ谷さん？』




｢え？｣




『大丈夫ですか？なんか、怖い顔してたけど』




｢…そうですか？気のせいですよ｣




『ならいいんですけど、あ、藤ヶ谷さんはたまの店の常連さんなんですよね』




｢ええ、そうです｣




『たまの珈琲、美味しいでしょ。あ、あれ飲みました？』






これも美味しいんですよ、あれも美味しいんですよって、嬉しそうに話しては、早くまた飲みたいな〜って耽ける






｢…好きなんですね｣




『……はい、好きです笑』






珈琲の話なのに、あまりに嬉しそうに真っ直ぐに好きという北山が、嫌だった







だから、これは八つ当たりで






｢俺も、好きです｣







俺の気持ちが伝わりますように



北山の目を真っ直ぐに見つめて、重なっては、逸らさせないように捉えて







｢本当に好きです｣






結局、『あぁ、美味しいもんな』ってすぐに逸らされてしまってからは、わざとなのか1度も目が合うことはなくて



……やってしまったんだと落ち込みそうになった時





『また……来てくださいね』




って、どこか遠慮がちに言ってくれて、嫌われてはないんだと伝わって安心した







｢また明日きます｣




『待ってます』






また会えるってそれだけで、こんなにも心躍らされるのは、多分もう後にも先にも北山だけだと思う




もう、この先北山の以上の人に、俺は出会える気がしないんだ



だから、僅かな望みでもいい、諦めたくない





俺、今……北山に全力で恋をしてる







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