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北山side
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藤ヶ谷から連絡が来てた
何件も、大丈夫?熱は?ちゃんと薬飲んだ?って
『母親かよ…』
『…っ』
大丈夫じゃない、会いたい
そんな身勝手なことを送ってしまったら、きっと何もかも壊れてしまうと思ったから
ただ、大丈夫とだけ返した
『…ん』
もう、随分と前から空のコップをただ眺めていた
まだお昼、藤ヶ谷は、帰ってこない
ようやく重たい体を起こして見ると、立ちくらみがした
俺このまましんじゃうかもーなんて、馬鹿な独り言を言ってみたりしながら
ふらふらの足取りでなんとか冷蔵庫に辿り着いた
『水…』
手に取った瞬間、離れていった水は、ボトンと鈍い音を立てて、床に転がった
その内何かにぶつかって、ぴたりと止まった
『なん…で』
その瞬間に、ふっと体の力が抜けて、そのまま前に倒れそうになった俺を、抱きとめてくれたのは藤ヶ谷だった
藤「熱…上がってんな」
『…っ』
お願いだから
優しく、しないで
お願いだから…
藤「北山?」
俺の名前を、呼ばないで…
『…っぁ』
会いたかったんだよ俺、
藤ヶ谷に
好きなんだよ…?
藤ヶ谷のことが、ずっと…ずっと
藤「どうした…」
『なんで来たんだよっ』
俺もう、頭の中ぐちゃぐちゃだよ
藤ヶ谷に優しくされるのが、辛い
藤ヶ谷をこれ以上好きになるのが、怖い…
でも…
でもほんとはね…
『藤ヶ谷…っ』
嬉しいんだよ、藤ヶ谷が来てくれて
凄く凄く嬉しいんだ
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作者名:ももみつ | 作成日時:2022年8月23日 16時