優しい雨－２－ (ページ36)

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『大丈夫かな』

「…あぁ」

『藤ヶ谷』

「…」

『藤ヶ谷さん』

「…」

『太輔さん？』

「…え」

急に顔をあげた俺に対して、

びっくりしたと驚く北山が、少しして

『お前も大丈夫か？』

そう聞いてくる

「…何が」

『…藤ヶ谷ってさ、』

『下の名前呼ばれるの苦手？笑』

冗談ぽく笑いながら

『なんか、悲しそうな顔するからさ』

『なんて…俺の勘違いかな笑』

「…いなく、なったんだ」

『…え？』

「俺をそう呼んでた人が」

俺は、宏光の為なら

なんだって出来る…本当にそう思った

『…好き、だったんだ、その人のこと』

「……あぁ

今もずっと…その人が、好きだ」

『……そっ、か』

なぁんだ、お前にもそんなやついたんだなーって

茶化してくる

『そっかー…まぁ、いるよなぁ』

「…」

『そっか』

そして、聞きづらそうに

居なくなったってのはって

｢…全部、忘れちゃったんだ｣

『忘れた？って…』

｢俺のことも、友達のことも、自分のことも…｣

そこで初めて、北山の顔を見て

しまったって思った

｢なんて、冗談笑

ごめん笑｣

『…え？』

｢居なくなったって言うか、遠くに行ったって言うか

うん、別れた…って言うの、かな笑

まぁ、そんな感じ笑｣

嘘を並べ立てて

誤魔化そうとしたって

どうしようもなく、虚しくなるだけなのに

｢…ごめん｣

君の為に、嘘を上手くつけない俺に

軽蔑するかい

知らなかった

宏光が居なくなった

それがどんなに俺の中で大きな事なのか

苦しくて、辛くて、会いたくて、戻りたくて

『…藤ヶ谷』

｢悔しいんだ…｣

あの時、君の異変に気がついていたのに

俺は何も出来なかったんだ

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