嘘つき (ページ21)

今日:2 hit、昨日:37 hit、合計:77,488 hit

21 ページ21

玉森side

.

誰かにそう言って欲しかったんだと思う

みつが

傍にいてあげなよ

そう言ってくれた時

俺は本当に、救われたんだ

.

.

病室の扉を開くと

彼女が一瞬驚いた顔をして

でもすぐに、目に涙を浮かべて

堪らず、抱きしめた

「もう、離れない」

「これからはずっと、傍にいる」

『裕太...っ』

彼女の震えた声を聞いて

しまったって思った

不安にさせてしまったね

ごめんね...

これからはもっと俺、強くなるから

しっかりとその手を握るよ

君を1人になんかさせない

だからさ

「柚月...一緒に生きよう？」

柚「...うんっ」

彼女の涙混じりの笑顔を見て

一生守っていく

そう覚悟した

「そう、これ買ってきたんだ」

柚「また、桃？笑」

「好きでしょ？」

柚「好きだけど笑」

「切ってあげる」

柚「大丈夫？」

ちょっと前まで

包丁ろくに握ったことなくて

でも、柚月に

大好きな桃を、切ってあげたくて

家で沢山練習したんだ

柚「裕太...」

「どう？」

柚「裕太にしては...上出来じゃん？」

「ほんと！」

まだまだ完璧には行かなくて

皮だってこんなに残っているのに

彼女は美味しいって

笑って食べてくれた

好きだって思った

「柚月」

柚「ん？」

そっと、唇を重ねた

彼女は、頬を赤くして

そんな所も

好きだよ

柚「裕太...」

彼女が不安がる

終わりなんて、見えないくらい

激しく、互いを求め合う

柚「すき...っ」

彼女の今にも消えそうな声に

涙が出そうになった

「柚月...っ好きだよっ」

これが彼女の運命なら

俺は運命が憎い

お願いだよ...

柚月を連れていかないで...

.