hugging (g9) ページ21
*kissing のふたり。
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高そうなホテルの、見たこともない広さの部屋に通されて、どきどきしながらシャワーを浴びた。まだ、赤ちゃんができる前の、結婚記念日。なかなかゆっくりできないからと、こんなすてきなホテルを予約してくれていた亀井さん。
急にどうしたの、と問うと、欲しいもの聞いても葵はいらない言うやろ、と、だいすきな笑顔で返されて。結婚して数年経つが、未だに大人な亀井さんにどきどきしてしまう。
ベッドルームに、震える足を差し出すと。少し髪の毛が濡れた亀井さんが、ベッドに腰掛けていた。私に気付いて、男らしく小さく笑う。
「なに、そんなとこでビビってんねん」
「だ、って…」
「…ほら、はよおいで」
余裕のある表情で、手招きをされるから。おそるおそる、亀井さんに近付く。そんな私を楽しそうに待ってくれる亀井さんの目の前に立つと、亀井さんは私の左手を優しく握る。
「……指輪、」
「え?」
「いや、夫婦なんやなって」
「うん、…夫婦です」
「…葵、」
急に真面目な、低い声で囁かれて、どきっと胸がなった。優しく握る手と反対の手が、後頭部に回って、そのまま引き寄せられた。
近くなる、距離。亀井さんの、すうっと閉じた瞳に合わせて、私もぎゅっと瞳を閉じた。
「…ん……っ」
啄むキスから、すぐに変わる大人なキス。亀井さんは慣れていて、いつまでたっても私は慣れなくて。呼吸が苦しくなるけど、亀井さんは止める気持ちなんて、さらさらない。急にベッドに倒されて、さらに深く塞がれる。
吐息が漏れて、苦しくて、ぼうっとする。それはきっと、心地よいもので、もっと、と強請ってしまう。
「か、めい、さ…」
「ん?」
「気持ちい、…キス」
「…いつからそんな、誘うようなこと言うようになったん?」
いけない子やな、掠れた、少し余裕のない声が、耳元で響いた。そのまままた塞がれて、嬉しくて、目尻に涙が溜まる。
ーーー亀井さん、だいすき
伝わってほしくて、亀井さんに抱きついた。薄く目を開けたけど、ぼうっとしてしまって、亀井さんの表情は分からなかった。
ただ、唇が頬に移って、耳元に移って、最後は左手薬指に移って。愛を誓うような仕草と上目遣いに、どきどきしてしまう。
「か、め……さっ」
「おじさんを本気にさせたらあかんよ、」
「私、そんな……」
愛してる、そう聞こえて、言葉なんて返せなくなった。
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aoi(プロフ) - りょうさん» りょうさま、こんばんは*コメントありがとうございます。いつもあたたかいお言葉、本当にうれしいです。これからもそう言ってもらえるおはなしを、書いていけたらなあと思います! (2019年11月7日 20時) (レス) id: fdd157f3df (このIDを非表示/違反報告)
りょう - 更新ありがとうございます。やっぱりaoiさんの文章大好きです…きゅんきゅんしながら読み返しました。これからも楽しみに更新お待ちしてます! (2019年11月7日 1時) (レス) id: 087b3fd508 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - りょうさん» はじめまして*こちらこそ、もったいないお言葉ありがとうございます。これからも読みたいと思ってもらえるおはなしを、描いていければなあと思います!コメントありがとうございました* (2019年10月23日 21時) (レス) id: fdd157f3df (このIDを非表示/違反報告)
りょう - はじめましてaoiさんの野球選手小説大好きで、何回も読みに来てしまっています。また新しいお話を書いてくださるのを楽しみにしています! (2019年10月23日 16時) (レス) id: 087b3fd508 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - りんさん» コメントありがとうございます*気が向いたら、おはなしを思いついたら、書きたいなあとは思っています。はっきりと言えませんが、また遊びにきてくれると嬉しいです* (2019年7月30日 22時) (レス) id: 3dc625fcb2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:aoi | 作成日時:2019年2月18日 23時