kissing (g9) ページ18
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「亀井さん、」
結婚して、数年。私は未だに、亀井さんのことを亀井さんと呼ぶ。葵やて亀井やろ、と、目尻に皺を寄せて笑う顔がすきだから、いつもいつも亀井さんと呼んでしまう。
そんな亀井さんと、私に宝物ができた。
「んー、なに?」
「亀井さん」
「なんやー」
「亀井さん」
「だからなにー?」
「亀井さん、」
「もうなんや、」
「妊娠しました」
「だからしつこいって………え」
ソファーで携帯をいじっていた亀井さんが、勢いよく身体を起こして私を見た。大きく開いた目が少し揺れている。
あ、動揺してる。お腹に子どもがいると、告げることに少し緊張感があった。喜んでくれると分かっていても、なんだか構えてしまっていて。
すると亀井さんは、大きな掌を。ゆっくり私のお腹に当てた。
「ここに、おるん?」
「はい、います」
「…俺と葵の赤ちゃん?」
「亀井さんと私の赤ちゃんです」
「…ほんまに……」
大きな掌がゆっくりお腹を撫でる。まるで赤ちゃんの頭を撫でるような、柔らかい手付き。なんだかそれが愛おしくて、掌を重ねた。
「亀井さん、パパになりますね」
「おん、せやな…」
「私はママになります」
「…せやな」
「パパとママで、この子をずっと愛していきましょうね、亀井さん」
そう言うと亀井さんは、労わるように私を抱きしめた。力強いのに優しい、お腹の赤ちゃんを気遣うような抱きしめ方に、ふっと笑ってしまう。
「葵、ほんまにありがとうな」
「え?」
「俺、ほんましあわせ、今」
「ふふ、私もです」
「父ちゃんはこれから、もっとがんばるで」
「パパが野球選手だって分かるまで、現役がんばらなくちゃですね?」
「それめっちゃええやん。がんばろ」
「ファイトです」
新しい家族が増えるんやな、なんかすごいな、って、やっぱり目尻を下げて笑う、だいすきな表情。
ーーー私、こんなすてきなひとと、結婚できてしあわせだなあ
そう思わせてくれる、笑顔。
ねえ、お腹の赤ちゃん。私の旦那さん、あなたのパパはね、すごくかっこいいひとだよ。家事はあまり得意ではないけど、優しくて、スマートで、器が大きくて、ひとに慕われて、愛されて。
そんなパパと、ママのもとに、来てくれてありがとう。しあわせにしてくれてありがとう。
_fin
ユニフォームは亀井さんです*
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aoi(プロフ) - りょうさん» りょうさま、こんばんは*コメントありがとうございます。いつもあたたかいお言葉、本当にうれしいです。これからもそう言ってもらえるおはなしを、書いていけたらなあと思います! (2019年11月7日 20時) (レス) id: fdd157f3df (このIDを非表示/違反報告)
りょう - 更新ありがとうございます。やっぱりaoiさんの文章大好きです…きゅんきゅんしながら読み返しました。これからも楽しみに更新お待ちしてます! (2019年11月7日 1時) (レス) id: 087b3fd508 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - りょうさん» はじめまして*こちらこそ、もったいないお言葉ありがとうございます。これからも読みたいと思ってもらえるおはなしを、描いていければなあと思います!コメントありがとうございました* (2019年10月23日 21時) (レス) id: fdd157f3df (このIDを非表示/違反報告)
りょう - はじめましてaoiさんの野球選手小説大好きで、何回も読みに来てしまっています。また新しいお話を書いてくださるのを楽しみにしています! (2019年10月23日 16時) (レス) id: 087b3fd508 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - りんさん» コメントありがとうございます*気が向いたら、おはなしを思いついたら、書きたいなあとは思っています。はっきりと言えませんが、また遊びにきてくれると嬉しいです* (2019年7月30日 22時) (レス) id: 3dc625fcb2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:aoi | 作成日時:2019年2月18日 23時