メイクヌナ ページ49
ベテランのメイクスタッフのソヨンさんがそうだった。
第一印象は恐い人。
始めて現場で会った時は口調もキツいし明らかに邪魔者扱いされた。
まぁ、本当に邪魔だったと思う。
現場を何も知らない人間がいきなり職場に現れて突っ立っているだけなんだから。
でも仕事熱心で、彼女のメイクはとても素敵だった。
メンバーをメイクしている彼女自身もかっこ良かったし、メイクされたメンバー達は…普段からかっこ良いんだろうけど…その何倍も魅力的になった。
そんな彼女をメンバー達も信頼していることは一目瞭然だった。
しばらく現場に通っていると、少しずつ現場の動きもわかるようになり、ちょっとしたことは手伝えるようになってきた。
その頃から、ソヨンさんの私に対する扱いも少しずつ変わってきて、口調は相変わらずだけど指示をくれたり話しかけてくれるようになった。
ある時、お互いしばらく時間が空いた時にたまたま一緒になり、話す機会があった。
SY「だいぶ慣れてきたみたいね」
「はい。おかげさまで」
SY「最初はぼーっとしてる人かと思ってたけど、案外動けるのね」
「ありがとうございます?」
SY「ごめんなさいね。態度悪くて。あいつらのメイクしてると色々と神経質になることも多くて…」
そう言って今まであったことを話してくれた。
ネットで好き勝手書かれたり、追っかけみたいな気持ちで入ってきちゃう新人がいたり…ソヨンさんはデビュー当時から彼らをずっと担当していて、色んなことに巻き込まれたらしい。
SY「だから初対面の人はどうしても身構えちゃうのよね」
それはそうなるだろう…。
彼らと同じように、ソヨンさんも相当な苦労をしてきたんだろう。
「私、ソヨンさんのメイク大好きです」
ずっと伝えたかったことを言ってみた。
最初から思っていたことだけど、媚を売っているだけだと思われても嫌だったし、気持ち悪いかもと思って言っていなかった。
でも今は、こうやって陰で彼らを支えてくれている人達にも、尊敬の気持ちを伝えたかった。
SY「Aさん…ありがとう」
一瞬固まったソヨンさんだったが、そう言って初めて笑顔を見せてくれた。
…めっちゃ美人だな。
「ソヨンさん…モテますよね?」
思わず聞いてしまう。
SY「は?何言ってんの。私結婚してるけど」
「え?ご結婚されてるんですか!?」
SY「そうよ。知らなかった?ミンジュンは私の夫よ」
えぇえ〜!!!誰か教えてよ!!
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作者名:よぞら* | 作成日時:2021年12月1日 14時