奇跡の ページ48
「じゃあ、お前もアレやれよ…」
「アレ?」
ぶっきらぼうな言葉にカナヲちゃんが首を傾げる。
「アレだよ、ほら髪飾り。………最後の鬼狩りだ。お前の家族も連れて行ってやれ」
伊之助くんの言葉にカナヲちゃんが目を見開いた。
そっか。
カナヲちゃんにとって、しのぶさんは師範でもあり家族なんだ。
何だか、私と実弥さんと似ている。
今にも泣きそうなカナヲちゃんが唇を噛み締めると、ほどけていた髪を結った。
そこに髪飾りを付ける。
それを見た伊之助くんが満足そうに笑う。
「必ずぶっ倒して帰んぞ!」
二人でそれに頷くと、三人揃って長い廊下を駆け出した。
*****
廊下を進むと、曲がり角から何やら声が聞こえてくる。
けれど近くに鬼の気配はない。
気付いたらしい伊之助くんも「んっ?」と反応した。
「誰かいる…?」
「関係ねぇ!鬼かも知れねぇからな!!」
そう言って走る速度を上げた伊之助くん。
「あっ!待って!鬼じゃない筈だから!」
けれど私の制止も聞かずに飛び出して行く。
次の瞬間、曲がり角から現れた人物の顔に伊之助くんの蹴りが入った。
「ギャアアアッ!!!」と二人分の悲鳴がしたかと思うと、ズザァと勢いよく廊下を滑りながら倒れるその人達。
「いってぇ………」と呻き声を上げて起き上がったのは村田さんだった。
傍には傷だらけの善逸くんもいる。
「二人とも!大丈夫!?」
私は慌てて傍に座り込んで善逸くんを起こす。
「あぁ、Aさん、………助けてぇ、痛いよぉぅ」
涙と鼻水と傷と血で顔をぐちゃぐちゃにした善逸くんが、私にすがり付いてくる。
うーん………
ちょっと動きにくいから勘弁してほしい………
そうは思うけれど、酷い怪我の具合からして相当頑張ったようだ。
とりあえず、そっと背中を撫でて落ち着かせる。
「紋逸!………と、里田じゃねえか!」
思いっきり二人の名前を間違える伊之助くん。
「村田だ!それより謝れぇ!!」
「お?……あぁ、悪かったな」
全く“悪い”と思っていなさそうな口振りに、村田さんが怒りでぷるぷる震えている。
「悪かったなって言ってるだろうが!許せよ!!炭吾郎なら許してくれるぞ!」
何故か逆ギレし始めた。
その様子をおろおろと不安げにカナヲちゃんが見つめている。
「あ、でもアイツなら蹴りなんて喰らわねえか!!」と今度は笑い始めた。
そんな伊之助くんを見てカナヲちゃんの顔つきが変わった。
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月見(プロフ) - 澪凪さん» 嬉しいコメントありがとうございます!お待たせしてばかりですが、更新頑張りますね!最後までどうぞお付き合い下さい(*^^*) (2021年7月29日 21時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
澪凪(プロフ) - やばいです好きぃぃぃぃぃぃぃっ!!頑張ってください、めっちゃ楽しみにしてます! (2021年7月29日 9時) (レス) id: 279a2ef6a9 (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - みっちゃんさん» ありがとうございます!おっしゃる通り、すれ違いつつもこの辺りから少しずつ二人の距離が縮んでいく予定です(*^^*)のんびり更新ですが精一杯頑張るので、最後までよろしくお願いします! (2021年7月6日 21時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
みっちゃん(プロフ) - めっっっちゃめちゃ面白いですね…実弥さんと夢主さんがすれ違いながらも徐々に近付いていく感じがね!もう、ね!(*´・v・`)いつも更新、本当にお疲れ様です。これからも楽しみにしております!! (2021年7月6日 10時) (レス) id: b998dfb0fd (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - 衣世さん» コメントありがとうございます!小説版読んでいた時に、実弥さんとカナエさん…そうなのかな?と思ったので、「2」で一瞬カナエさんのこと書きましたが、ファンブックで確定したときは驚きました(*_*)まだその辺の下書きがとっ散らかっていますが、更新頑張りますね(^^) (2021年6月18日 17時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見 | 作成日時:2021年6月18日 5時