無断 ページ26
屋敷の中に入って男性を寝かせたあと、私たちは客間へ案内された。
彼は千寿郎くんといって、やはり煉獄さんの弟さんだった。
さっき運んだ男性は彼のお父さんで、元炎柱だったそうだ。
お互いに自己紹介が終わり、「お茶を淹れてきますね」と席を外した千寿郎くん。
ふと隣の炭治郎くんを見ると、頭を俯かせてとても落ち込んでいた。
「大丈夫?」
顔を覗き込めば、とても青い顔をしているから心配になる。
「大怪我してるって聞いていたけれど、よくしのぶさんに外出させてもえたね」
彼女の名前を出した途端、ビクッと彼の肩が跳ねた。
その反応に「え…」と固まってしまう。
「ま、まさか、黙って来たの?」
「………はい」
その返事は罰が悪そうに小さくて、ぎこちないものだった。
しのぶさんに後でどれだけ怒られることか………
想像しただけで気の毒だ。
「たんじろう、まだいたい?」
陽葵が心配そうに立ち上がって、炭治郎くんの頭を撫でる。
「ありがとう。大丈夫だ」
陽葵を安心させようと笑いかけているけれど、やはり顔色が悪い。
「どうして、そこまでしてここに来たの?」
私の問いかけに「それは…」と何か答えようとした時、部屋の襖が開いてお盆に湯飲みを乗せた千寿郎くんが戻ってきた。
私たちの側に座ると「お茶です」と、それぞれに湯飲みを配ってくれる。
「ありがとう」と受けとれば、「お菓子もありますよ」と陽翔と陽葵に笑い掛けてくれる千寿郎くん。
二人は「やったー!お菓子だ!」と喜んで早速手を付ける。
「すみません。突然尋ねてきたのに…気を遣わせてしまって…」
申し訳なく思っていると「いえ」と彼が首を横に振る。
「ごめんね。お父さん頭突いちゃって…。大丈夫だった?」
炭治郎くんが青い顔のまま申し訳なさそうに言うと、あまり気にしていないのか、なんともないように彼が言う。
「大丈夫だと思います。目を覚ましたらお酒を買いに行ったので」
「そっか…」
どこかほっとしたような炭治郎くんに、千寿郎くんがぺこっと頭を下げる。
「炭治郎さん、ありがとうございます」
炭治郎くんは勿論、私も困惑していると彼が続ける。
「すっきりしました。兄を悪く言われても僕は口答えすら出来なかったから…」
そこまで言うと、千寿郎くんが俯く。
「兄はどのような最期だったでしょうか?」
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月見(プロフ) - 京華さん» 初めまして。とても嬉しいコメントありがとうございます!楽しんでもらえるようにこれからも頑張ります!のんびり更新ですが、よろしくお願いします(*^^*) (2021年4月22日 20時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
京華(プロフ) - 初めまして。コメント失礼致します。月見さんの描く実弥さんが格好良過ぎて大好きです!更新嬉しかったです!今後も楽しみにしています♪ (2021年4月22日 19時) (レス) id: 483ff1bb3b (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - さねみん推し(だが渋い槇寿郎も好き)さん» 変換ミスしたまま気が付かず更新していたみたいです。修正しました!ありがとうございます(^^) (2021年4月16日 13時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
さねみん推し(だが渋い槇寿郎も好き) - すいません、26ページ無断の所、炭治郎が千寿郎くんに頭突きの事を謝るところの(お義父さん)は千寿郎くんと槇寿郎さんは実の親子なので(義)は付けなくていいんじゃないかなと(^_^;) (2021年4月16日 8時) (レス) id: c50ca7ded5 (このIDを非表示/違反報告)
星奈 - こんな初見野郎でもコメント返してくれてありがとうございます!(*´ω`*) (2021年4月9日 22時) (レス) id: a759e2d602 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見 | 作成日時:2021年3月8日 17時