検索窓
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:22,643 hit

10% ページ6

「……にしても、今日は晴れて良かった」
「イルカのショーを見たいと思っていたし、雨が降ると気分が滅入ってしまいそうだからね」

(…普段はこの眩しい快晴は苦手に感じることの方が多いけれど)
(…今はあのどんよりとした暗さを感じたくはない)
(また、変なことを考えてしまいそうだから)


すっと手を伸ばし、君の手を握る。
細い指が俺を受け入れ、指同士を絡めるとぎゅっと握り返してくれた。


「Aの手は温かいね」
「……ふふ、俺の手は冷たいか」


さっきの缶ジュースのせいかな。
そう言う前に、君が少し恥ずかしそうにしながら、心が温かい証拠だと言った。
幼い頃に祖母から聞いたことあるようなその言葉にくすっと笑みをこぼす。
…けれど、


「…心が温かい、か」
「………そうだと、いいんだけれど」


ぼそりと、声を低く呟く。
彼女の発言を微笑ましく思う一方で、申し訳なさを抱いた。
…だって、最近の俺は、


(……温かさとは無縁の考えを抱いてしまうんだから)

「……」
「…何でもないよ」


先ほど呟いた言葉は彼女には届かなかったらしい。
その届かなかった言葉を何でもないと掻き消し、笑みを向ける。
俺の言葉を素直に受け止めたのか、深く追及してはいけないと感じたのか、君は頷いて違う話題を口にした。
…それは、この間、友達と遠出した日のことだった。


「…ああ、お土産」
「本当に買ってきてくれたんだ」


その日の話を少し聞いただけで、胸中は大袈裟なほどに動揺を見せた。
それを彼女に悟られぬよう、いつも通りを装う。


「へえ、お揃いのキーホルダー」


袋に入れて差し出されたキーホルダーには、綺麗に輝く小ぶりな青い石がついているものだった。
彼女は色違いの物を買ったようで、スマホにはきらりと赤い石が見えた。


「綺麗だね」
「…うん、これから俺もスマホにつけられそう」
「……あはは、確かに、キャラクターものはちょっと抵抗あるからね」
「君は俺のこと、よく分かってる」


その話題はその後も続いたが、友達の話は多く出なかった。
何処で見たあれが綺麗だったとか、お店で食べたあれが美味しかったとか、そういう話を多くしてくれた。
話しが一通り終わると、今度一緒に行こう。君はそう言って、酷く眩しい笑顔を俺に向ける。


(一緒に行こう。か)
(可愛いこと、言ってくれるなぁ…)
(…でも、)

10%→←10%



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (42 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
58人がお気に入り
設定タグ:ヤンデレ , 狂愛病 , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:不雲綺 | 作成日時:2017年11月14日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。