発症前 ページ1
オレの愛情表現とかいうやつは、下手くそなのだろうか。
好意を自覚した小学生のころから、それなりにアピールはしているつもりだが…。
そもそも、今、同じ高校に通っている時点で、少しは疑問に思うだろ。
いくら幼馴染だからって、普通は高校まで同じ所に通わない。
登下校だって、互いに友達がいるんだし、わざわざ二人で並んで通う必要だってない。
昼休みは…まあ、お前が友達と食べることもあるけど、オレが誘って二人で食べることがほとんどだ。
オレの気持ちに、少しは気付いてくれてもいいと思う。
彼女はいないのかと聞いてきた時はさすがに、こいつ正気かと思った。
(…探りを入れてきてる感じじゃ、なかったもんな…)
(……多分)
頬杖を突き窓の外を見る。
少し赤がかかり始めた青空は、何処か寂しさを覚えさせた。
ぼうっとしていると、同じクラスの男子生徒がオレの名前を呼ぶ。
反応をワンテンポ遅らせてそちらに視線を送ると、下校の約束をしていたAが廊下に立っていた。
幼馴染が待ってる。男子生徒はそうオレに告げ、待っている間、見せつけるようにAと会話をしだす。
…そう、見せつけるように。
(……あいつ、絶対わざとだ)
オレがAに抱いている感情を知っているあいつは、度々こうしてからかうことがある。
オレの反応を見て、楽しんでいるんだ。
苛々と呆れが入り混じって、重い溜息を机の上に吐き出した。
「悪い、待たせた」
男子生徒をしっしっと手で追い払い、彼女に話しかける。
「ちょっと考えごとしててさ」
「…いや、そんな大事なこととかじゃないし。ぼんやりしてただけ」
よほど深刻そうな顔をしていたのか、お前は表情に心配そうな色を滲ませていた。
(…まあ、深刻といえば、深刻か)
(長年の片思いは、オレの中でとてつもなく大きな問題となっているし)
(……はあ、自分のヘタレっぷりに呆れる)
ちらり、視線を横にやる。
廊下を歩きながら会話をするお前の横顔は、昔より少し大人になっていたけれど、でもまだ幼さが残っていて…。
(こんなに、近いのにな)
こみあげてくる何かを、ぐっと飲みこんだ。
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作者名:不雲綺 | 作成日時:2017年11月14日 18時