〃 ページ39
明らかに様子のおかしい春真は走って逃げようとする。
それを引き留めると
「ッ全部お前のせいだ!!!!」
「ぎゃん!!!い、いいいきなり蹴ることないでしょ!!!!」
腹部を思いっきり蹴られてしまう。
怒って声を荒げたが、視界に映った春真の顔は真っ赤で涙目になっていた。
そのせいで、私の口からそれ以上言葉は出てこなかった。
「!……だっ、だいじょう、ぶ……」
涙目に気付いたAは、優しく春真に声をかけた。
しばらく目を右往左往させ、困惑した様子を見せた春真だったが
「…………これ」
逃げる気が失せたのか、くしゃくしゃの紙をAへ渡した。
「……その、…手紙」
ただでさえ赤い顔が、もっと赤くなる。
それを見て、Aは嬉しそうに笑い、ありがとうと礼を言ってその手紙を受け取った。
ぱっと顔を明るくした春真は、どういたしましてと、聞き取れるのがやっとな声で答えた。
クシャクシャなのは、私がさっき驚かせたせいだろうか…。
罪悪感に駆られながら春真の子供らしい表情を見て、こういう顔は可愛いなとまた思う。
するとAが、鞄から小さな包みを取り出した。
「飴…?」
春真はそれを受け取り、目を輝かせた。
「…い、いいの…?…っ!!!!あっ、ありが、とう…」
「良かったね、春真」
「…あんたに頭撫でられても嬉しくない」
「このガキ…」
・
春真と別れた後に、手紙の内容をAに聞いた。
内緒だと言われたが、こっそり後ろから盗み見る。
すぐに覗いたのがバレ、全部は読めなかったが、雑な字で「スキです」と書かれているのが見えた。
待っている間の緊張している様子を思い出し、思わず笑ってしまった。
それにつられたAは、春真くん可愛いねと手紙を微笑ましそうに見つめていた。
――――
可愛い初恋
終わり ログインすれば
この作者の新作が読める(完全無料)
←〃
4人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:不雲綺 | 作成日時:2017年7月21日 17時