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その眩しさに言葉を失って、乾いた唇と唇の隙間から静かに呼吸を繰り返すことしかできなかった。
ずるりと肩にかけていたスポーツバッグの持ち手が手首までゆっくり落ちる。
この笑顔を、こんなに近い場所で見たのは初めてだ。
それに見惚れていると、彼女がようやく笑い終える。
表情には笑みが残っていて、頬は少し赤くなっていた。
「……嫌じゃない…。って、ことは、一緒に帰っても、いいってこと…?」
君は勿論と頷いて、歩き出す。
「…」
その背中をちょっとだけ見つめて、追いかける。
隣に立って、彼女の横顔をばれないようにこっそりと見る。
彼女の首筋を、粒になった汗がつうと垂れるのが見えた。
「…あ、暑い…ね」
夏だからね。
先ほどより楽しそうに君は言う。
「…オレ、暑いの苦手」
そういうと、君はだろうねと頷いた。
(…だろうね…?)
不思議に思っていると、君はちらりとこちらを見上げ口を開く。
『 』
目があったことで跳ねた心臓が、またうるさく騒ぎ出す。
「…えっ」
オレの足が歩みをやめると、君は少し早歩きになった。
(今…いつも見てるから、なんとなく知ってる。…って、言った…?)
「それって、どういう…」
オレの疑問は、蝉の鳴き声の中へ消えていった。
――――
夏の空
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作者名:不雲綺 | 作成日時:2017年7月21日 17時